「タカシ!マコト!」


溢れかえるほどの人が行きかう中で、耳にまっすぐ入ってくる声の方をたどると、そこにはお世辞抜きに綺麗な女がいた。



「本当に来てくれたんだね。嬉しい」



美しい、ポルシェ相当の値段の振袖を着た女が、俺とタカシにハグを送って、にっこり笑う。

周りの女達はモデルみたいなタカシを熱い視線で見つめて、男達は一際輝く女を眩しそうに見てる。ちなみに俺はそんな哀れな男の中の1人。

タカシと女はそんな周りの視線をまったく気にせずに楽しそうに会話を交わす。


女がアメリカに、世界一の学校に帰ると決めた後も、俺たちは変わりなくつるんで、ハッピーにはしゃいでいた。

女は相変わらずタカシのハートを掴んで放さないし、タカシも女への心遣いは細かい。
それに、Gボーイズからの話だとタカシは女と付き合うようになってから少しやわらかくなったらしい。まぁ、そんなギャップ効果で結局奴の信者は増えたんだけどね。
それでもGガールズと女は仲良しだ。
最初のきっかけがGガールズを救うものだったし、女の垢ぬけた嫌味の無い性格は敵を作らない。それに、2人で並んだ姿はどっからどう見てもお似合いそのものだった。

女と初めて会った時、最初は北風みたいにドライでクールな奴なのかと思ったけど、本当は誰よりも熱いハートを持った、太陽みたいに笑う女。



「成人おめでとう。女」

「ありがとう」



タカシがかかって来た電話に出て少し人の少ないところに行って、2人っきりになった時にお祝いの言葉を言えば、屈託の無い笑みを返してくれる。
あぁ、もしかしたらこの笑顔を無条件で手に入れられるポジションは俺のものだったかもしれないのに。
本気で捕まえに行かないで逃がした獲物は、大きい。



「…タカシの、あんなに楽しそうな顔は初めてみたよ」

「そうなの?タカシは、キュートだよ」

「あいつが?」


吹き出して、聞き返す。
あの氷の王様をキュート、なんていう奴が現れるとは。やっぱり色んな意味ですごい女。



「うん。かわいいよ。タカシ本人も気づいてないかもしれないけど」



そう言って遠くで小さな機械に向かって表情一つ変えずに話すタカシを、愛おしそうに見つめる女は、俺がこんなに長い間付き合ってても見られなかったタカシのいろんな面を見ているんだろう。
そして、その愛情溢れる瞳を見て、悟る。
なんだ、俺には最初から入りこむ余地なんて、なかったんだ。
2人はこんなにも愛しあってる。


あの時タカシが女を安っぽいナンパから助けたのも、トラブルに協力してくれたのも、なにもかも計算しつくされた事のように感じる。まるで、そうなる予定になってて、なるべくしてなった、そんな偶然。

だってそうだろう?そんな小さな偶然が、今、俺たちをここに引きあわせて、冬を彩っている。


きっと女も、気づかないうちに最初からタカシを愛してたんだ。
だけどユウリがいたから、気持ちに無意識に蓋をしてなかったことにしてた。それでも、そんな蓋を簡単にこじ開けて、引っ張り出したタカシに導かれて、自然のままに、自分の思うままに愛することができたんだ。



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