「本当にいい子達ばっかりだね。Gボーイズは、いい組織だ」
「お褒めに預かり光栄だな」
挨拶が一通り済んだのか、VIPルームのソファーに女が腰掛けながら言うとタカシが満足そうに口の端を上げる。
それから間をあけずにタカシの側近の一人が女にドリンクを差し出す。
「ありがとう。…あーあ、ここでお酒飲むのも、これで最後か」
「また帰ってきた時に飲めばいい」
「でもここにはもう座れないかもしれないでしょ?」
ベルベットのさわり心地を確かめるようにゆっくりとソファーを撫でる女に、タカシがどういう意味だ、と視線で問う。
「もしかしたらタカシが他の誰かにキングの座を奪われているかもしれない」
女の発言に、俺と側近のGボーイズ達は固まる。
冗談だったのかもしれないけど、こっちは冗談じゃない。そんな事タカシに言って、どうなるのだ、と恐る恐る現キングを見ると、その整った顔には不機嫌な雰囲気はちっとも見当たらなくて、むしろ女を愛おしげに見てるんだから、こっちはどんな反応していいのか分からない。
「…女がここにまた座りたいと望むなら、俺はそれまでガキの王を続けていてもいい」
「まぁ、ここのドリンク美味しいし、音響もいいから私、好きだよ」
タカシの言葉を軽くかわして甘そうなアルコールを飲む女はいたずらに笑っている。
いつの間にこいつらはこんなにカップルらしくなったのか。
バカップルを見ているとなんだかリンに会いたくなってきて、ぼんやり愛しい俺の彼女の事を考えているとラスタ・ラブのエントランスが開いて、冬の夜の冷たい風と一緒に今まさに思い描いていたリンと、それとユウリが入って来た。
そして、フロアの熱が一瞬止まった。