一年という区切りを経て、俺たちは新しい未来につながる年を迎える。
年を越すことによって、古い年の汚れとか束縛とかいろんなものを捨て去って、新しい年と一緒に心機一転、また新鮮な心で色々なことに挑戦する。


年明けっていう行事には昔の偉い人が考えたいろんな意図とか意味があるけど、俺の一年は新しくなろうが街のトラブルが運ばれてくるのは変わらないし、俺の生活にも変化はなかったからあんまり執着がなかった。
そう開き直って年末の掃除を一切放棄していた俺をおふくろはまるで一年かけて溜まったゴミみたいに見たけど、ここに来てようやく理解者を得られた。



「12月31日から1月1日になるのも、9月30日から10月1日になるのも、2月3日から4日になるのも、なんにも変わらないと思うんだよね」



ラスタ・ラブで31日の夜を迎えていた俺たちは、ホットな音楽と丁度いい度数のアルコールで身体を温めていた。
そうしたら俺が考えてたことを急に女が口にしたから、本当はタカシより俺との方が波長が合うんじゃないか、と思ったけどもしうっかりそんなこと口に出したら年明けを迎える前にタカシに埋められるから心に留めておく。



「9月30日から10月1日は月が変わって、12月31日から1月1日は年が変わってるだろ。同じなのか?」

「夜が来て、朝を迎える、っていう同じ一日の始まりだよ。祝う意味がわからない。それならなんで毎日新しい日を祝わないの?」

「それもそうだな」



赤いベルベットのソファに座るタカシの隣には、あたりまえのように女がいる。

こいつらはいまでこそなんでもないように一緒にいるけど、この前俺の顔の形が変わるかもしれない事態に陥ったのはまだ記憶に新しい。
あの時俺に向けられたタカシの殺気はいま思い出してもまだ震えが来る。まったくチキンな俺。


だけどくっ付いてからのこいつらは、なんていうか安定していて、まるでずっと昔からそこにあって、そうあるのが当たり前みたいに感じる。
すっぽりと収まって、隣に座ると一枚の絵みたいにそこにはまる。



「もちろん天文学的には太陽の周期とかが関係して区切りになってるのかもしれないけど、そっちは私の専門じゃないからどうでもいい」

「それでも一年の区切りはわかりやすいだろ。見えない大きな周期に区切られるのも悪くない」

「私にとって分かりやすい区切りは学校の始まる8月だよ。…あ、日本では4月だっけ」



間違ってもお互いの意見に曖昧に賛成なんてしない、我を通すこいつらは一緒にいるのになぜか口論にはならなくて、ただつらつら意見を言い合ってる。


それと、女は日本の大学に編入しようか迷ってるみたい。
女なら日本一の大学に簡単に入れるだろうけど、所詮それは日本一で、世界で見れば26位だ。
1から26に落ちてくるには勇気がいるだろう。
だけど、いまはタカシと一緒にいたい方にメーターが傾いてるらしくて、年末で開いていない学校のオフィスを無理矢理開けさせていろいろ話を聞いたりしてて、忙しそう。



「女、大学どうすることにしたんだ?」

「やっぱりこっちの大学に入ろうと思う。…こっちでも取ろうと思えば博士号は取れるしね」



尋ねると、はっきり返ってくる答え。
どうやら俺がぼーっとしてるうちに頭の回転も行動もがむしゃらに早いお嬢さんは自分の道を決めてたみたい。


だけど、その笑顔にいつもの輝きが無いように見えるのは、俺の視界がアルコールで濁ってるからなのかは、わからない。


タカシはいつも通り涼しい顔で酒を煽っていて、俺は全く表情が読めない。



この時俺は、それがいつも通りの顔に見えたけど、それは違った。
周りの連中が12時に近づくにつれヒートアップしていくのと反比例するように、俺たちの周りの熱は下がっていたんだ。
女と、タカシの決断の時が迫っていた。

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