「マコト、ビンゴだ。奴らの居場所が割れた」
「そうか。突撃は」
「今夜だ」
言いながらタカシはもう携帯を操作して女に回線を繋ぐ。まったく、せっかちな王様。
ここ2日、電話番号と名前を使ってゼロワンに携帯使用履歴の時間と場所の分布図を作ってもらってそれを元にGボーイズが奴らの居場所を探っていた。そうしたら、女の掴んだ情報通り八王子の近くのアパートで、ビンゴ。
我慢なんて言葉を知らない王様はたった2日、カリスマ的人気をGボーイズに魅せ付けた女に会えなかっただけで機嫌が悪いったらなかった。本当、こいつの隣に座ってるだけで暖房ガンガンで暑いくらいの車内なのに、歯が鳴ったくらい。
「女か、俺だ。見つかった。今夜決行だ」
破天荒な女が電話に出たのか、やっとメルセデスの中の温度が戻ってくる。仕掛ける日を今日にしたのも、Gガールズの安否が心配なのもあるけど一刻も早く女に会いたかった方が強いと、俺は思う。
「飛ばせ」
電話を切った瞬間いつものアイスクールなキングに戻って手早く女の家の住所を運転手に伝える。
ここ2日間感じられなかった微かな柔らかさがタカシに戻って、ようやく臆病な俺は声をかけられる。
「早く見つかってよかったな」
「あぁ」
「…女に会えなくてさみしかったか?」
口にしてからちょっと後悔。俺としたことが調子に乗り過ぎて口が滑った。
鼻の骨を粉砕する神速の右フックに警戒してみるけど、いつまでたっても俺の鼻はいつも通り完璧な位置にある。
王はなによりもからかわれたりするのが嫌いなはずなのに。
不審に思いながら顔面崩壊の警戒を解いて隣に座るキングの顔を見てみるとなにか考えているようで、しばらく間を開けて答えた。
「そうかもしれないな…」
こいつは自分が不機嫌だったことに気づいてなかったみたい。まったく、下々の者が絶え間なくブリザードを振りまく自分に対してどんなに恐れてたかなんて知らないんだろう。
無意識ほど質の悪いものってないよな。
それでもそれを指摘できないでいるのは俺もあの型破りの、綺麗な人懐こい笑顔を浮かべる奴に本当は会いたくて会いたくて仕方なかったからかもしれない。