「堂上きょうかーん!」



小牧と不足した資料を買いだしに行ったら、街に目につく女がいた。
この場合の目につく、は悪い意味ではなくて、目立つ、というか人目を惹く、というか、自然と見入ってしまうような、女だった。

大きなサングラスを顔にかけて、髪はゆるいウェーブのかかった割と長い髪。

夏ももう終わりに近づいていて、太陽が最後の力を振り絞っているかのように暑い日で、もうとっくに変わっていた長袖のワイシャツじゃ暑いくらいだった。
その女はそんな日にうまく適応した涼しげな、すこし露出のある服を着ていていつかのテレビで見た海外の女優みたいな、というか日本人には少し着るのに勇気がいるような服を颯爽となんの嫌味もなく着こなしていた。

彼女が進行方向にいたからのなんとなく見ていたのもあったが、間違いなく街の人間の視線が彼女に集まっているのは明らかだった。
太陽は平等に光を撒いているはずなのに、彼女のところだけ明かりが強く、明るく見えた。
…いや、彼女自体が光っているような、そんな感覚に近い。
活発に笑い、サングラスで顔が隠れているはずなのにその表情は見る人間を惹きつけて、目が離せなくなる。
隣を歩いていた小牧もその女を見ているのが分かった。
だから、その女が急に俺達を見て、挙句俺の名前を呼んで寄って来た時は本当に肝を抜かした。しかもいままで不可抗力だったとはいえ見ていた事実があるから、少し後ろめたく、こっちに向かってくる女に身構えた。



「小牧教官も!」

「おまっ、!Victoria…!」



近くに寄って来た女を見て、今度こそ心底びっくりする。

そりゃそうだろう。今日有給を取っていた部下にこんな形で街で会うとは誰も思わない。

小牧も驚いているようで、目を丸くしている。



「買いだしですか?お疲れさまです」


にこにこ笑いながら話しかけてくるVictoriaはやっぱり近くにいてもきらきら光っているように見えた。



「あ、あぁ。…Victoriaは、今日は非番だったな」

「中学の頃の友達と今日は遊びに行くんです」


なんとか冷静さを取り戻しながら言うと、また眩しい笑顔を振りまきながら答えてくる。


普段は制服姿しか見たこと無かったけど、やっぱりこうやって私服を着ればVictoriaも普通の女なんだな、なんて当たり前のことを再認識する。
それと同時に、あんな事がなかったならVictoriaはこんな危ない戦闘職種に着くことも、日々戦いに身を置くこともなく、普通に就職して、普通に友達と遊んで、普通に恋愛、…………まぁそれはいいとして。


いまだに目一杯咲き誇った花のように笑いながら小牧と話しているVictoriaを見つめる。


あんなに辛い目にあいながらもこんな風に笑えるVictoriaは強いと思う。

彼女がこうやって笑える日が一日でも多くあれば良いと、思った。

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