「聞いたわよ、すごいじゃない。ハイポート17位だって?」
聞き取りやすいはっきりとした、でも女性特有の柔らかさも含んだ声が聞こえて顔を上げると、麻子の顔があった。
「………べつにすごくないよ」
自分でもふて腐れた声になったのはわかったけど、それを取り繕うつもりもない。
「なに拗ねてんの?男子もいたんでしょ?一位になれないのがあたりまえよ」
「……………違うもん。17って数字が嫌いなだけだもん」
ずばり思ってたことを言われて困ったから、あえて数字の話を出す。
「…なんの話?」
「だから、17って数字が嫌いなの。あんな大きいくせに素数ってどうよ?図々しい。しかも2掛けても34でしょ?足したらまた7じゃん!こんなに煮ても焼いても綺麗じゃない数字他に無い」
「……なんの話?」
「だーかーら、7が嫌いなの!みんなでラッキーセブンとか言っちゃってさ。なにがラッキー?なにも!?これも2掛けたって14。美しくない偶数だよね。見苦しい」
これは嘘じゃない。17って数字は昔から嫌いなんだ。
それを分かりやすく説明していると、背後から軽い笑い声が聞こえた。
「ぷっ、ははは。お昼食べながら数字の話してる子初めてみた」
「まったくだな。そんなことを気にしてたのか、おまえは」
穏やかな小牧上官の声の後に聞こえてきたのは堂上教官の声。
呆れたような口調が腹立つけど、そんなことはどうでもいい。
本当の理由、一番になりたかった、なんて気づかれるよりもよっぽどいい。
「…ほっといてください」
言い残して席を立つ。
ご飯はまだ残っていたけど、きつい練習の後に全部たべられるほどの胃は持ってない。
人一倍食べて体力を付けなきゃいけないことはわかってる。
だけど食べれないものはしかたない。
堂上教官の横を通る時にお皿に残ったご飯を見られたのは気づいたけど気にしないで食堂から出た。
きっと、午後の訓練もハードだ。
体力を戻さないと。