夜、小牧教官の部屋で一緒に飲んでいると急に呼び出され、なにかと思えば集会室にはBellを始めとする自分を含めた堂上班の面子と、玄田隊長、それからたしかBellと同じ部屋の柴崎一士がいた。
非公式の報告をしたい、という柴崎一士の言葉に反論を挟もうとしたけど、そのまえに口を開いたBellに阻まれた。
「あれー?お酒のにおいする」
そう言って俺の方に寄ってきて、小さな子供のように匂いをかぐVictoriaに苦笑が漏れる
「そんなに匂うか?」
「うーん、玄田隊長ほどじゃないけど、…あれ、小牧教官も?」
小さいBellが俺の服に鼻を近づけて匂いをかぐから、腹のあたりがくすぐったい。
次に鼻をよせられた小牧教官も困ったように笑っている。
「Victoria、いい加減にしろ」
イラついたような口調の堂上教官に言われて、Bellは大人しく柴崎一士の隣に戻った。
それから柴崎一士の口から聞かされたのは信じられないような、だけど非常に信憑性の高い情報。
館長代理が問題図書を考える会と良化隊と手を組んで検閲対象の本を狙っている、というのはありえない話じゃない。
しかもかなり手口が巧妙だ。
「これが、その本です」
「多くない?18冊あるけど?」
柴崎一士が出した本に、小牧教官が疑問を挟む。
たしかこの間発覚した所在不明図書は15冊だったはず。
「15に18、か。これは関係あるね。15っていうのはシンプルで裏表の無い数字だけどそれが18になったなら話は別だよ。なんかある」
18にどんなイメージを抱いているのか知らないが妙に難しい顔をして言いきるVictoriaをじっと見た玄田隊長が普段から厳つい顔をさらに強張らせて俺達に他言無用礼を出して、解散を指示した。
みんながみんな難しい顔でなにかを考えていて、自分も難しい顔をしていたと気づいたのは部屋に戻って、鏡を見た時だった。