暗い、光の届かない暗い道。
誰も助けてくれなくて、ただ大切な子が良化隊に汚されているのを熱い右手を抱えながら見ているしかできなかった。
誰か、きて。たすけて。
やめて、彼女を傷つけるのはやめて。
お願い。私ならどうなってもいいから、お願い、彼女だけは。
彼女だけは………!
呼吸が苦しくなって、目を開けて半身を起こすと目の前に黒いなにかがいて、喉がひゅ、と鳴ったのが分かった。
「い、いやっ…!」
また彼女を傷つけるの?
もう痛いのは嫌だ。彼女が泣くのもいやだ。右手が痛い。
声が出なくなって、息が詰まって上手に呼吸ができない。
助けて。
誰か、助けて。
おねがい、
「どうじょう、きょうかっ…」
息もままならないまま必死に彼の名前を呼ぶ。
いるはずないのは分かってる。
だけど他に呼べる名前がない。
だめだ、もう、苦しい、
目の前が暗くなってきて暗闇に身を委ねそうになった時、聞こえた声で一気に意識が引っ張られる。
「アホか貴様ら!どけ!」
いるはずないと思った堂上教官が、目の前にいる。
「Bell、俺だ、大丈夫か?」
優しく言いながら抱きしめてくれる教官の腕に必死にしがみついて、ようやく呼吸ができるようになる。
怖かった。本当に、怖かった。
教官が強く抱きしめてくれて、心臓がやっとゆっくりと脈打ちはじめる。
このにおい、落ちつく。
教官の胸に身体を預けていたら、いつのまにか眠ってしまっていた。
不思議とその時見た夢は、ただひたすら幸せの中を歩いている私と、堂上教官の姿だった。