やっぱりVictoriaが図書特殊部隊唯一の女隊員なんだと考えるのはこんな時だ。
「おまえはなにをしている!」
「………おふろ?」
廊下を曲がったところでばったり会ったVictoriaを見て、驚愕する。
こいつは、一体、なにを考えているんだ。
いかにも風呂上り、といった感じに身体からほのかに熱を発しながら、ぴんくの頬をしたVictoriaは、バスローブ一枚だった。
それを指摘したはずなのにVictoriaの口から出てきたのはなんとも間抜けな返答で、一日の疲れが一気に襲って来た気がした。
「そんなことを聞いているんじゃない!そんな格好で何をしているんだと聞いているんだ!」
「だから、部屋に戻ろうとしてたんですけど、」
「違うと言ってるだろ!服を着ろと言ってるんだ!」
「、あぁ!」
言うのを若干憚れる言葉を口にして、ようやく俺の言いたかったことが伝わったのか、明るい表情を見せた。
なにも事情の知らない奴に聞かれたらありえないくらい大きな誤解を生みそうな言葉だ…。
「バスローブ、…だめですか?」
「駄目に決まってるだろ!」
誰かに会ったらどうするつもりだったんだ、と言って、Victoriaから視線を無理矢理はずす。
少し気を抜くと、さっき視界に入ったVictoriaの白いうなじや、細い肩に浮かぶ鎖骨、バスローブの隙間から微かに見えた胸が鮮明に思い出せて、少し、まずい。
なるべく見ないように、と視線を下にすれば、そこにはバスローブからむき出したやわらかそうな足が見えて、またあわてて視線をはずす。
「っ、…いいから早く部屋戻って着替えろ。」
「はーい」
この状況は打破するにはこいつから離れるのが一番だと思って、苦し紛れにそう言うと、素直に部屋に向かって歩いて行くVictoriaに、心の底から安心する。
たまたま会ったのが俺だけだったからよかったものの、他の男子隊員と会ってたらと、思うと頭を抱えたくなる。
風呂上りのVictoriaは、まだ汗を流していない、泥っぽい俺なんかとはそもそも根本的に違う、なにか神聖な存在な気がして、すこしたじろいだ。
これは最近気づいたことだが、あいつは男に警戒しているはずなのに、いったん気を許すととことん無防備だ。
まだ先の長い訓練の日々を思って、すこし気が遠くなった。