夏も本番になってきて、気温も湿度も高い日が多いけど今日は空気も乾いていて、こういう日は弾が自分の描いたイメージ通りに飛ぶ。
「全弾命中、か。すごいね」
「どうも」
図書特殊部隊の訓練合宿は、大自然の中で行われて、都会っ子の私にはなれないこともあるけど、射撃訓練だけはこっちの方が好きだ。
なんたって、長距離訓練を屋外でできる。
そんな事を思って少しうかれてたら私が使った的を見て、小牧教官が褒めてくれる。
「女子隊員は腕力足りなかったりして実はあんまり銃撃向いてないんだけど、Victoriaさんは言う事無しだ。狙撃手を視野に入れての訓練受けてみる気ない?…どう思う、堂上?」
小牧教官に声をかけられて堂上教官が近くに来た。
「でもライフルのリーチ足りるか?おまえ、視力は?」
「0.8、くらいですかね」
私の答えを聞いて、小牧教官と堂上教官がものすごく驚いた顔をした。
小牧教官のこんな顔見るのはじめてだ。
「Victoriaさん、その視力であの的狙ってたの?」
「そうですけど、」
実際あんまり的はよく見えないけど、どこにあるかだけでも見えれば大体のものは狙えます、と続けると小牧教官は優しく息をついた。
「これはもう、天性、だね」
「どうも…」
「やっぱり狙撃手、有りだと思うな。」
呟いて小牧教官がライフルを差し出してくる
「持ってみて」
「…………………」
長い。
腕が結構ぎりぎりだけど、まぁ、これも銃の癖だと思って受け入れれば大丈夫、だと思う。
「やっぱり少しでかいな」
「うん…これで、的狙える?」
他人の目から見てもライフルを持った私は不安定に見えるのか、少し思案顔で小牧教官が指示してきた。
がくん、と音がして、その後に来た衝撃
「っ、」
つい足が一歩後ろに下がって、それを必死につま先で止める
なにこれ、マシンガン初めて撃った時も衝撃は来たけど、それはどちらかというと驚きの方が大きくて、だけどこれは、ライフルは本当に物理的に”衝撃”だ。
「これ、すごい反動ですね。驚きました」
教官たちを振り返ってそう言うと、今度こそ2人は固まって驚いていた。
「Victoria、…ライフル撃ったのは今日がはじめてか?」
「あたりまえじゃないですか」
「………すごい。どんぴしゃ命中だよ」
スコープを覗いたまま手塚教官が掠れた声を出した。
「こりゃあ鍛えようによっちゃあ進藤なんかを超えるかもな!」
大きな声が聞こえて振り向くと大きな玄田隊長が楽しそうに笑っていた。
「しんどう、?」
「タスクフォースの名狙撃手だよ」
知らない名前に首をかしげると、小牧教官が優しくフォローしてくれる。
「ライフル持ったのがはじめてだって?見てたが、リーチ足りてなかっただろ。どうやって撃ったんだ。あれは狙った結果か?」
「狙った結果、っていうか、まぁ当たるように撃っただけですけど、」
ライフルって的がすごく狙いやすいですね、と言うと玄田隊長はまた嬉しそうに笑った。
「おまえは生まれつきの狙撃手だな!ちっこい癖になかなかやる!」
それだけ言って、満足したのか玄田隊長は私達に背を向けて他の人の訓練を見にいった。
まったく、嵐のような人だ。
「…あの、ちょっと聞いたことあるんですけど、狙撃手ってあんまり当てちゃいけないんですよね」
「そうだね。威嚇の目的が多いからね」
「でも当たっちゃったら仕方ないですよね」
「えっと、それは、まぁ…そうだね」
「………当てるなよ」
私の質問の意図を理解した堂上教官が眉間に皺を寄せて言ってきた。
ちくしょう、
私は良化隊に当てたいのに。