「教官、堂上教官っ、」
「……………………」
「っきょうかん、」
Victoriaの俺の呼ぶ声が段々悲痛さを増してきたのに気がついて、手を離す。
そして振り返ると、目元をぬぐいながら泣きじゃくるVictoriaの姿。
「っ、ごめ、なさい、…なんか、いっぱい、いっぱいでっ、」
混乱のピークに達したのか、ただひたすら取り乱して泣くVictoria。
こんな風に感情をむき出しにして取り乱すVictoriaの姿を見るのは初めてだった。
それほど学歴の事で妬まれたりすることがこいつには苦痛なんだろう。
「…Victoria」
「っ、は、い」
「、顔を上げろ」
「無理、ですっ」
恐い、とただひたすら繰り返しながら俺の顔を見ようとしないVictoriaの腕を掴んで、もう一度呼ぶ。
「Bell、俺の顔を見ろ」
「、!」
ようやく俺の顔を見たBellは、濁った瞳に段々光を映し始める。
「よく聞け、Bell。俺は、俺達は誰もお前の事を疎ましく思ったりしない。」
「きょうかん、」
「お前の学歴云々の前に、お前はお前だろう」
「……っ」
「みんな、心配してるぞ。帰ろう」
「はい、」
そして再び差し出した俺の手を、Bellはしっかり握ってくれた。
このやわらかい手を守るためならなんだってやれる。
そう、思った。