朝、玄田隊長に言われた言葉はあまりも衝撃を含んでいて、驚く前に笑ってしまった。
「え、いまなんて?」
薄く笑いながら聞き返す私に、玄田隊長は重いため息を吐きながら繰り返す。
「だから、おまえに査問会から出頭命令が出ている。…砂川が図書の隠蔽をして、共犯者としておまえの名前を出したらしい」
もう一度同じ事を聞いてもやっぱり上手に反応できない私の変わりにものすごく分かりやすく反応したのは隣に立っていた堂上教官だった。
「なにかの間違いです!!」
そう体中で怒りを表しながら言う堂上教官に、感謝の思い出でいっぱいになる。
なにも聞かずに即座に私の事を信じて、私の変わりに弁解してくれた教官の気持ちが素直に嬉しかった。
彼は私を信じてくれているんだ。
「俺もなにかの間違いだということは分かってる。だけど、なぁ…」
苦々しい表情をして、頭をかく玄田隊長。
どうやら査問会は逃げられるような相手じゃないみたいだ。
「…いいですよ。私、行きます」
「!!」
あっさり言った私に、玄田隊長も堂上教官も驚いた顔で私を見る。
「おまえ、そんな簡単に、」
「でも、呼ばれちゃったものは仕方ないですし、私がなにもやっていないのも事実ですから出る所に出てはっきりさせちゃうのが一番いいんじゃないんですか」
「それは、そうとも言えるが…」
いまもし査問会から逃げられたとしても、いつかやっぱりめんどくさい事になって返ってくると思う。
だから、いまのうちに決着を付けたい。
白か黒かはっきりさせたいタイプなんだから仕方ない。
ちらり、と堂上教官の顔を見ると、彼は自分が査問に呼ばれたわけでもないのに苦しそうな顔をしている。
私が、彼にこんな顔をさせているんだろうか。
私が査問に呼ばれなければ。砂川が私の名前を出さなければ、彼にこんな表情をさせなくてすんだのに。
そう思って、やっぱりあの時グーで殴っておくべきだったな、と反省した。