「俺が危ないと判断したら即刻止めさせるからな」
「はい」
こんな我儘言った私にもこうやって考慮してくれる堂上教官に心の中で感謝する。
私が男と組みたいって言ったら立候補してくれた男達にも感謝かな。
下心が見え見えなのはいっそ清々しくて気にならない。
「では、始め!」
「…………」
薄っすら笑ってる男に向かって、歩いていく。
たぶん私を馬鹿にしてるわけじゃないだろうけど、男特有の”女”に対しての優越感が感じられていい気はしない。
「おらぁ!」
「………」
男の手が私の襟に伸びかけた時には、もう相手の襟を右手、帯を左手で掴んで、そのまま円を描くように投げる。
どしん、と音がして道場中の全員が息を飲んだのがわかったけど、気づかないふりをして次の相手と向き合った。
男に力で敵わないのは分かってる。
力勝負になったら完全に負ける。
だから相手にロックされる前に、動いて、相手の力を利用して遠心力に従って投げる。
これを7人の男にきっちり決めた所で、堂上教官のストップが入った
「よし、もういい。…おまえ、おまえと組め」
「…はい」
目の前には静かに立ってる堂上教官。
もう訓練終了時刻を少し過ぎているけど、誰も道場から出ようとしない。
軽く終わらせて、はやくご飯を食べに行きたいな。