「…なんですか、この胸糞悪いもの」


私の口から素直に出た言葉に、小牧教官は苦笑した。


若干口調が粗いのは目をつぶってほしい。誰だって、こんな物見たら穏やかな気分じゃいられないはずだ。



会議室に呼びだされたのは夕方の事で、私が到着するとそこにはもう堂上班のみんながいた。
そこで見せられたのは、本の内容をこれでもか、と卑下しているサイトだった。



「砂川って奴がやってる、図書館コンテンツのひとつだよ」


砂川、という名前に頭を傾げていると、小牧教官は Victoriaさんと同期で、手塚と同じ部屋なんだけど、知らない?と聞いてくる。
…知りません。


ふるふると首をふって否定すると、小牧教官はまた苦笑する。

そんなに優しく笑われたって、わからないものはわからない。
自慢じゃないけど、人の顔と名前を覚えるのはものすごく苦手だ。



砂川の顔を思い浮かべるのは諦めて、もう一度パソコンを覗きこむ。


人の発した言葉には魂が宿る。
それは紙面に書かれた言葉でも、電気機器に灯した言葉でも、同じだ。
こういう汚い感情にまみれた言葉は、自然に見る人の心まで汚す。
このパソコンの画面を覗きこんでいるだけで、その砂川のどろどろとした汚い感情が流れ込んで来るような気がして、非常に気分が悪い。




「…光、」



光は私が呼びかけるとこっちを見てくれる。


「今度一緒にいる時、この砂川って奴見かけたら教えてね」

「…それは構わないけど、………なに企んでるんだよ」

「いや、なんか適当に理由つけて一発くらい殴らせてもらおうかと思って」

「適当な理由って…」



私の言葉を聞いて、部屋の中の全員の頬が引き攣る。

それはきっと、私の言葉が冗談やはったりじゃないって知ってるからだ。



「あんまり問題は起こすなよ」




しかたない、とでもいうようにため息をつく堂上教官に微笑んでみせる。

教官も、はっきりと注意をしないってことはこのレビューに怒りを抱いているってことだ。



顔も分からない”砂川”を思い浮かべてみて、そしてやっぱり一発殴りたいな、と思った。

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