静かに深く深呼吸して、狙いを定める。
怒りで手が震えそうだけど、こんなことで的を外していたら図書特殊部隊なんて名乗れない。
バン、バン、!
乾いた音が空気を揺らして、男がまさに小牧教官にかけよう、と持っていた水の入ったバケツと、小牧教官と椅子を繋いでいる紐に弾が当たる。
バケツを持っていた男は驚いて床にへたり込んで、小牧教官の自由を奪っていた縄が床に落ちる。
「見事だ」
「ありがとうございます」
呟くように褒めてくれる玄田隊長にお礼を言ってから、良化隊に向き直る。
小牧教官は椅子の上にぐったりと座っているけど、私達と毬江ちゃんの姿を確認して、困ったように笑った。
「関東図書隊、ここに推参だ」
口火を切った玄田隊長に良化隊は狼狽しながらも、抗議をする。
だけどもともとむちゃくちゃなこじつけの容疑だから、良化隊に穴も多い。
「聾唖者って、だれのことですか」
「いや、それは、聾者、と言おうとして」
「…聾者って、だれのことですか」
強い口調ではっきりと喋る毬江ちゃんに、良化隊は目に見えてたじろく。
「貴方達こそ、本当は差別が好きなんじゃないんですか!」
凛とした声が響いた時、はっきりと今回の勝敗がついた。
私達の、勝ちだ。
毬江ちゃんが、小牧教官の事を救ってくれた。
本当に、よかった。
好きな人が、好きな人の事を救う。
こんなに素敵なことは、きっと他にはない。