小牧教官が良化隊に連れていかれてから丸2日。
図書隊総出で査問会の場所を探しているけど、いまだにこれといった情報は見つからない。

このままじゃ、小牧教官の体力と気力が切れる方が早い。



「…つかれた」



ぽつり、と呟いた言葉は夜の部屋に溶けて行く。

麻子は何も言わずに寝る準備を進めている。



「つかれた、…けど、小牧教官はもっと疲れてるよね」

「…そうね」


こうゆう時、麻子は絶対気休めの優しい事は言わない。
それが嬉しくもあるけど、辛くも、ある。


いまこうして私が柔らかいカーペットの上に座っている瞬間、小牧教官はどんな苦しい目にあっているんだろう。
想像も、できない。



「…私さ、思うんだけど、絶対毬江ちゃんにこの事教えたほうがいいと思うんだよね」

「私もそう思う」

「やっぱり?」



ここ二日、ずっと考えていたこと。
きっと毬江ちゃんは知りたがると思う。

もし、本当に仮に、だけど、もし堂上教官が私のせいで、私の知らないとこで苦しい目に合って、それが私の知らないうちに私の知らない誰かの手によって解決させていたら、すごくすごく悔しく思うと思う。
その苦しみは私自身に対してでもあるし、それを解決してくれた人へでもあるし、教えてくれなかった全員を恨むと思う。
そして、大げさかもしれないけど、その加害者を殺して、私も、死ぬ、かもしれない。
それほどまでに、人間の感情は過激で繊細だ。

だから、



「私、明日毬江ちゃんの家に行ってみる」



堂上教官には、毬江ちゃんには伝えるな、と言われている。
小牧教官が身内には伝えないでくれ、と言ったらしい。
だけど、そんなの構っていられない。



体調不良ってことにするから、誰かに聞かれたら口裏合わせてね、と麻子に言うとあきれたような溜息が返ってきた。


「馬鹿ね。私も一緒に行くに決まってるでしょ」

「でも、そうしたら麻子まで怒られちゃうよ」



怒られるのは一人で事が足りるはずだ。
しかも麻子は本気で基地司令まで目指しているんだから、こんなところで上官のマイナス評価を受けるなんて、よくない。



「私、あんたのそういう思い切りのいいところ好きだから」



強く、優しい頬笑みを向けられて、私はもうなにも言えなくなる。
そうか、麻子も小牧教官を助けたい気持ちは一緒なんだ。


「麻子もね」



2人で顔を見合わせて、笑う。
小牧教官が連れて行かれてから初めて笑った気がする。
女友達は、大切な存在だ。


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