それは、本当に突然の事だった。
「被疑者、小牧幹久二等図書正は査問会への出頭を命ずる!」
人も多いお昼時のまったりとした時間は、いきなりの良化隊の登場でいとも簡単に壊された。
玄田隊長によって図書特殊部隊も投入されて、私も図書館のロビーへと出向いていた。
良化隊が図書館に足を踏み入れて、小牧教官の名前を呼んだ瞬間、図書館は水を打ったように静まり返る。
「っ、」
「打つなよ」
良化隊を見て自然と腰の銃に手が伸びた私に気づいて、隣の堂上教官が小声で制止してくる。
この人、本当によく見てるな。
「小牧二正の上官として事実関係を調べる猶予を要求する」
冷静に時間を稼ごうとする玄田隊長だったが、それも頭の足りない仮館長によって水の泡になる。
「武蔵野第一図書館代理館長として小牧幹久二等図書正の出頭に便宜を図る!」
この糞おやじ、と心の中で悪態をつく。
でも糞館長がこう言ってしまったものはもう取り返しようがない。
良化隊に連行されていく小牧教官を、ただ見ていることしかできない。
こんな事って、あんまりだ。
良化隊の奴らは小牧教官の罪名は未成年障害者への人権侵害、と言っていた。
未成年の障害者、ってたぶん毬江ちゃんの事だ。
あんなに彼女の事を大切にしていた小牧教官が人権侵害、なんてことするはずがない。
そこまで考えたところで、稲嶺司令が到着する。
だけど、今からできることは無い。
「………いまここで館長代理殴ったらクビですか?」
「…………、殴るなよ」
そう言った教官の手だって、痛いくらい拳を握りしめているのに。
大人になるっていうのはいろいろと行動が制限されて窮屈だ。