…、ひまだ。
現在時刻はお昼時の12:30ちょっと過ぎ。
かれこれ開館からずっと書架のまわりを少しずつ場所をかえながらうろうろしているけど、一向に変態男がやってくる様子はない。
ずっとなにもしないで立ちっぱなしっていうのも疲れるし、緊張を保つのも非常に疲れる。
っていうかその男が毎日図書館に来ている保障も無いから、今日来る可能性も非常に低いんだよな。
本当にこんな捜査に引っ掛かってくるのか…。
自分のやっている事が非常に無意味に思えて、さらにまた疲労感が襲ってくる。
麻子も疲れただろうし、ちょっと本を読むふりでもして椅子に座ろうかな、
適当に本を手にとって、椅子にむけて歩き出そう、とした時、不自然に大きい鞄を持った男が近づいてくるのが見えた。
………あれ、まじでか。
不自然に見えないようにさりげなく手に取った本を棚に戻して、また本を選んでいる素振りをする。
一瞬麻子の方を見ると、鋭く尖った視線と目が合った。
間違いない。こいつだ。
まさか、まさか本当にこんな手に引っ掛かるなんて。
なんて単純な男なんだろう。
男は本を探すような仕草をしながら、でも確実に私に近づいてきた。
私の真横に立って、鞄を床に置いた、と思ったらそれを私のスカートの下に動かす。
…一応スカートの下に短パンはいてるけど、やっぱり気持ち悪い。
むしゃくしゃする。
きっと小牧教官の知り合いの子もこんな気味の悪い思いをしたんだろう。
しかも私とは違って周りに麻子、っていう心強い味方もいなくて、ひとりぼっちでこんな奴に………
そこまで考えたところで、男の手が私の腰に伸びてきた。
ほんと、この男、
「殺すぞ、!」
「っが…っ!」
勢いよく腰をひねって、右手を思いっきり引いてそのまま真っすぐ突き出す。
丁度男の鼻にヒットして、男は鼻血をぼたぼた垂らしながら目には薄っすら涙まで浮かんでいる。
泣きたいのは被害者の女の人なのに、こいつが泣くとか、本当許せない。
「泣いてんじゃねぇよ!」
まだなにがなんだか分かっていない男の頬をまた殴る。
地面にひれ伏した男を見て、少し落ち着いてきた。
堂上教官や小牧教官たち、それと何事か、と様子を窺ってる一般利用者の人たちが集まってくる。
ミッションコンプリートでしょう、これは。