「ち、ち、ちばさぁーーーーん!」
「?………月?…月か!?」
「千葉さん!!」
「月!!」
自分の目を疑った。
まさかこんなところで、またこの人に会えるなんて。
嬉しすぎて自分を止められなくて、走って千葉さんに跳びつく。
思いっきりジャンプして、千葉さんの背中に足を回して首に腕をまわして抱きつく私を千葉さんもぎゅっとしてくれる。
痛いけど、すごく嬉しい。
「千葉さん…!」
「月、久しぶりだな!」
だっこされたまま、千葉さんの顔をよくみる。本物の、千葉さんだ。
「…俺もいるんだけどな」
「あ、!常盤さんも!」
しまった。完全に千葉さんに意識をもってかれて、気付かなかった。
千葉さんに降ろしてもらって、ちゃんと挨拶とハグをする。
「わー!2人とも変わってないですね!」
「月は女の子っぽくなったね。わかんなかったよ」
「からかわないでください、!」
「日本戻ってたのか。会うのは2年ぶり、か?」
「日本の大学行くから、こっちの高校来たんです!2年も経ちましたっけ…お久しぶりです!」
本当に、久しぶり。
なんにも変ってない、大好きな千葉さん。と、常盤さん。
「こんなとこで何してんだ?ひとりか?」
「あ…!」
千葉さんに言われてようやく思い出す。
みんなの事 忘れてた…!
慌てて振り返ると、そこには不思議そうな表情の顔が5つ。
「………横浜大栄?」
「おじさんが大栄のバスケ部の監督で、高校は大栄に入ったんです!マネージャーやってるんですよ…あ、そういえば千葉さんたちもバスケ部でしたっけ?」
「!?、あれ、おまえの親戚なのか!」
「知ってるんですか?…試合やった、とか?」
「あぁ、まぁな」
「へー!どっちが勝ったんですか?」
「…わすれた」
ふい、と視線をそらす千葉さん。
千葉さんは身長が高いから、千葉さんが下を向いてくれないと私がどう頑張っても目を見れない。
「おまえ新丸子と関わりあったのか?」
たしか千葉さんたちの行ってる新丸子高校は不良学校で有名だったっけ。
近づいてきた八熊先輩が不思議そうに聞いてくる。
八熊先輩も、千葉さんたちのこと知ってるんだ。今度、試合のことを聞いてみよう。
「千葉さんには、昔 助けてもらったんです」
「?」
「2年前 日本に来た時道に迷って、誰もいないところに来ちゃって、それで途方にくれてたら千葉さんが通りかかって、一緒に迷ってくれて…」
「(一緒に迷ったのか)」
「千葉さんが常盤さんに電話して、常盤さんが迎えにきてくれたんです」
「(それって、助けたの常盤じゃ…?)」
「なつかしいなぁ」
「あの時は驚いたよ。いきなり千葉さんからここはどこだ、って電話くるんだもん」
「その後、ご飯もごちそうになって…連絡したかったんですけど、連絡先きくのすっかり忘れてましたよ」
「そうそう。俺もそれ思った。忘れないうちに、いま教えて?」
「はい!」
携帯の赤外線で情報を送る。
常盤さんと千葉さんの名前がアドレスに登録されたのを見て、嬉しくなる。
「これからしばらく日本にいるんでしょ?たまに会おうよ」
「もちろんです!」
「…それで、おまえたちここでなにしてたんだ?」
千葉さんが、八熊先輩たちを見て言う。
あ、!そうだった!買い物に行くんだった!
忘れて話し込んでたなんて、自分ものすごく失礼だ…!
「ご、ごめんなさい…!」
「べつに謝ることじゃねぇだろ(抱きついたのはムカついたけど)」
慌てて謝ると八熊先輩は優しい声をかけてくれる。
白石先輩は常盤さんと知り合いなのか、挨拶を交わしてる。
「私達、スポーツショップに行く途中だったんです」
「スポーツショップ?もしかして、あそこ?」
常盤さんがお店の名前を口にする。
まさに、私達が行こうとしていたところだ。
常盤さんに、白石先輩が答える。
「あぁ。そこだ」
「すごい偶然だねぇ。俺達もそこ行く途中なんだよ」
「………」
嬉しそうに言う常盤さんとは対照に、白石先輩と八熊先輩は途端に嫌な顔をする。
あれ、好きじゃないのかな、
「一緒に行ってもいい?」
常盤さんに聞かれて、困ってしまう。
私はもちろん一緒に行けたら嬉しいけど、白石先輩と八熊先輩が嫌がるのも、嫌だ。
「えっと、」
困り切って横山先輩を見ると、助け舟を出してくれる。
「目的地が同じなんだから一緒に行けばいいじゃないか」
「…………」
「別にいいだろ?」
横山先輩が白石先輩と八熊先輩を見ると、ふたりも納得したのか頷いてくれた。
「よし、決まりだね。」
そう言って常盤さんは私の手を握って歩き出す。
昔から自然にスキンシップ激しい人だよなぁ。
でも、男の子に慣れてないはずの私にも恐怖感を抱かせないから不思議。
常盤さんと千葉さんに挟まれて歩き出す。
常盤さんと手を繋いで、千葉さんの腕を掴む。
なんて幸せなんだろう。
2人とまた会えて、本当によかった
10, Apr 2010
23, Sep 2020