痛林檎




中国神話最高神、天。それは長い歴史と異常なまでの精神を受け持つ者にしか成し遂げることの出来ない、最高神の中でも崇めたくなるような存在

天とはすなわち、神の住む場所の神


「よぉ、ゼウス。元気そうだな。老けた面して」

「…………本当に全てを仕組んだ奴が何を抜かしておる」

「俺は何もしてねぇだろー。……どうだよ、箱庭の創造主。あいつ等の様子は」

「今のところ特に問題はない。お前を除けばな」


問題は天だ。姿を現してはいけない孤高の存在が、フラフラと箱庭へ降りてくるのだ
天界の神が易々と姿を現してはなるまい


「暇だろ?上にいたって。酒でも飲もうぜ。創造主たる者、人間を真似るのも大事だぞ多分な」

「多分、か。相変わらずこじつけておるの」

「気のせいだ。……それにな、お前も苦労してるんだろ」

「!!」

「顔見りゃわかんぞ。ギリシャ神話最高神、ゼウス……なんだったっけか。あの人間のお嬢ちゃんがつけた名前は」


見た目こそそこまで年老いてはいないが、茶落けたその態度とは逆に落ち着いている雰囲気で、どこからか酒を取り出す
いつまでたっても掴めん不思議な奴だ
日本神話の雷神に酷く似た容姿をしているが、詳しいことは聞いたこともなければ、話された事もないのだ


「ケラウノスだ」

「それそれ。ケラちゃんだろ?いいなぁ、名前か。俺は人間に化けてるときの名前ならあるけどな。日本人名だが」

「ほう。あったのか」

「おう。満田ユウジ」

「……満田?」


聞いて違和感を覚え、記憶を巻き戻して気付いた
その名字は、雷神、風神、百虎、天后と同じものだった


「雷神は人間んときの俺の弟。残りのガキ3人は息子娘だ。まき沿いにしてやったんだよ」

「……愚かな。お前が人間である我が子を神へと推薦したというのか」

「当然。天のことは俺が決める。次はどいつが神にふさわしいかもな」


横暴と言われるワシですら、この男に横暴が過ぎると言いたくなる
いつもそうだったが、予想の斜め上のことをやらかしてくれるのだ。


「やって、うまくいけばバンバンザイ。駄目ならサヨーナラ。そんだけの話だ」

「……恐ろしい男よ。どうりでおかしいと思ったのだ」

「全部の紐を握ってんのは、俺だ。お前は横暴なんかじゃねぇよ」



(完璧だといえるその存在は全てを知っていた)






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