NARUTOのパロディ
友人とのメールで「書いてみよっか〜」で書いたもの。
初書きの上に漫画はコミック読み、アニメはカメに借りて見た程度。
書いたのは深夜という悪乗り。
笑って許せる方だけどうぞ。
***
血潮は温かく、肌は冷たい。
触れれば無機質な硬さが伝わってくる。
産毛を逆なでするように背中が粟立つ。
人為的に作られた顔から自然の笑みが零れた。
新しい仕掛けを組み上げる時は心躍る。
最後に残った生き物の部分が鼓動する。
暗い実験室に籠り、僅かな灯りの蝋燭を頼りに作業を始めて数日が経過している。
新しい傀儡を造る為の準備は確かに遅れていた。
人傀儡の製作には生き物である人間を基にするだけあり、鮮度もタイミングも慎重にならざるを得ない。
それが予定より遅れている。
まだ許容できる範囲での遅滞だが、これ以上遅れるとこの人傀儡は使いものにならないだろう。
もう少しでも作業の手が止められるのならば、俺は自称芸術家の発破魔をくびり殺し、他の相棒を待たなければならない。
何故か、それが最適な未来ではないかと思えて仕方がない。
「ダンナ、未だなのか、ノリが悪いぜ。オイラは退屈で面白くないぜ、うん」
「次に邪魔をすればその無駄口を叩けなくしてやると言った筈だぞ」
デイダラは部屋の片隅に置いてある毒瓶を摘み上げては戻す、途方もなく無駄な行為に勤しんでいる間なら未だ構わない。
傀儡製作には失敗は許されない。
その為に日頃は鎧代りに入っている傀儡から出て、自分の体でもって作業をしている。
デイダラはその傀儡の中に入ってみたり、防腐処理の薬瓶を開けたりと余計な行動をした。
その都度、傀儡製作の手は止められ、殺してやろうと思う。
事故に見せかけてデイダラを殺す事は可能だろうが、同じ組織の人間であり、一応でも同じ芸術家として生かせておいている。
少人数の組織は、デイダラを引き込まなければならないような苦悩を抱えている。
爆破の能力にかけては突出しているものの、口喧しく短絡的な性格のデイダラを誰が相棒にするのか、いや犠牲者にするのか少なからず興味はあったが、それが俺自身と知った時に抵抗したがどうにもならなかった。
一瞬の美を求めるデイダラの爆破芸術と、永久に形を留める俺の傀儡芸術は全く逆だ。
「蠍のダンナ。いつになったらその退屈な傀儡造りは終わるんだ、うん」
手にした工具を台の上に置き、デイダラの顔を見据えた。
「お前の命なら今すぐ終わらせてやる」
五指からチャクラの糸を飛ばし、天井から吊るしてある傀儡の五つに付け腕に仕込んである針を発射させた。
細く絞ったチャクラの糸は簡単には分からない。
特に、デイダラのような大雑把な性格の者には見えない。
デイダラにしてみれば天井から吊るされた幾つもの傀儡から不意撃ちをされている、だが残念なことにそれだけではこの男を殺せない。
針の方向を察知して避ける。
この程度の芸当ができなければ相棒はしていない。
溢れ出る殺気が針の方向を教えているのかもしれないが、増すばかりの殺気は抑えきれない。
これほど感情的にしてくれる男は他にいない。
天井からの針を回避したデイダラの右足にチャクラの糸を付け、引く。
文字通り足を取られたデイダラは転び、捕獲用の傀儡に片足を突っ込んだ。
裏の裏をかく忍者の世界だが、高等な技術の応酬に単純な策が有効な時もある。
「外せ! 蠍のダンナ、こいつを外しやがれ! うん!」
「お前が大人しく邪魔をしなければ外してやる」
再び工具を手に取り遅れている作業に取り掛かる。
生前の姿と能力をそのままに造る人傀儡は、瓶の中に船を組み立てるような難しさがある。
生前の形と傀儡としての形との折り合いをつけるのも難しい。
だが、それも楽しい。
朽ちぬ形、受け継がれる能力、磨き抜かれる性能。
永久の芸術作品だ。
しかし、それには当事者の死が必要だ。
いくら望んでも、生き物の部分を残す俺では叶わない。
そして、死して他人に操られる人形に成り下がるなど操る者として許せない。
俺は酷い矛盾を孕んでいる。
部品を一つ組み込んだ所で爆発音がした。
振り返る必要もない、業を煮やしたデイダラが傀儡から抜け出そうと発破したのだ。
頑丈に造ったが古い傀儡は爆ぜた。
爆風は髪を撫で上げ、俺の神経も逆撫でした。
「あーあ、ダンナが悪いんだぜ。うん」
「これ以上邪魔をするな。外に出てろ」
危険な心境だ。
今デイダラのニヤけた顔を見たら殺してしまいそうだ。
これまで我慢していた殺害衝動が突沸しそうだ。
「二人一組が基本なんだぜ、うん。それにオイラはダンナが心配なんだ、うん」
予想もしない「心配」という単語に耳を疑った。
「俺が心配だと?」
殺害衝動を必死に我慢してデイダラを振り返った。
デイダラは諦めたような呆れたような顔をしていた。
「前にも傀儡を一体造るとか言って実験室に籠ったら、予定を過ぎても出てきやしねぇ。様子を見てみりゃ三体目に取りかかってた、うん」
腕を組んで、まだ足に引っ掛かっている傀儡の部品を振り払いながら歩み寄ってくる。
「オイラは、またダンナが余計な傀儡造るんじゃないかって心配なんだ、うん」
髪で隠した片目さえも髪越しに見上げてくる。
その鬱陶しい髪を一房掴んで上げてみる。
イラつく目がそこにある。
頭を掴んで締め上げ、更に力を加える。
「そうかお前は俺を見張っていた訳だ。そんなに早く済ませたいなら邪魔をせずに大人しくしている事だ」
壁際に投げると、派手に倒れた。
大した怪我はないだろう、そのまま暫く動かずにいれば随分と手間が省ける。
言われなくとも今回は余分な肉体がない。
人傀儡の基となる肉体が無ければ造りようもない。
好ましい能力の肉体は簡単に手に入れられない。
試作の段階も既に終わり、肉体の能力を引き出す段階なのだ。
だから、新しい肉体が欲しい。
殺して、内臓を取り出して洗浄し、防腐処理をして、生前のチャクラを残すように加工して、仕掛けを組み込んで、動かす。
仕掛けが上手く作動するのは当然だが、何度試しても最初は不安で、高揚する。
造り手として、造った物が上手く使われる事は最高の賛美だ。
デイダラのように一瞬で散る、使い手を問わない物など反吐が出る。
「本当にノリが悪いよな、ダンナは、うん。そんな鈍間に造ってたら死んじまうぜ、うん」
「傀儡はノリで造る物じゃない」
「もっとリズミカルに手早く造れよダンナ、うん」
そのリズムを崩しているのがデイダラだ。
本当なら、既にこの人傀儡は完成している。
予定を大幅に遅らせているのは暇だと付け上がっている発破魔の所為だ。
「もう直ぐで終わる。死にたくなきゃ暫く黙ってろ!」
取り出した内臓を入れた硝子瓶の上に座り込んで、肩を上下させてデイダラは返した。
いつまで大人しくいるかは時間の問題だ。
傀儡は時間に追われて造る物でなければ、ノリで造るようなものでもない。
最高の技術を心血注いで造るものだ。
芸術とは魂を込めるモノだ。
自分自身の答えに、最後に残った生き物の部分が身震いした。
特にオチもなく、終わり。
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