寒い…ね?


首をちぢこめて寒さに震える彼女と冷たい指先を絡め合って、俺は薄暗い空を見上げた。

「寒いね」

笑いながら白い吐息を漏らす彼女の手を包むように握って、俺は教会へと急いだ。
二人で住めるようにと奥の部屋にはベッドや家具を揃えた。
寂れた教会の身長の倍以上ある扉を押して、隙間から彼女の手を引いて教会へと入る。
高い天井と大きく造られた窓ガラスで、教会の中もさほど外と変わりなく冷気が滞っていた。
違うのは風が吹くか吹かないかぐらいだろうが、体感温度は想像以上に違ってくる。
いつの間にか彼女は俺の手を離して、部屋の中央へと駆け寄っていた。
部屋の中央は床板が外され、剥き出しの地面に花が咲いていた。
彩りも綺麗な野に咲く花が一年を問わず咲いている光景に、初めて見た時は驚いた。
暗く天を覆われた、このミッドガルの地に花が咲くのかと、こんなに綺麗で強いものなのかと。
三編みに結われた栗毛の長い髪を揺らして、彼女は明るく笑う。
思わず見とれていると、彼女は少し恥ずかしそうに背を向けた。

「ごめんごめん」

そっと後ろから抱き締めれば、彼女の冷たい身体に心配になる。
花の世話に夢中になって風邪を引いてしまいそうだ。
奥の部屋へと連れていこうと身体を離した瞬間、彼女と息がかかるくらいの近さで向き合っていた。
触れ合っていないことが不思議なくらいの間近さに、時が止まってしまったかのような錯覚に陥る。
とても綺麗な翡翠色の瞳に、長いまつ毛が少し影を落としている。

「いてっ」

いつの間にか額に痛みを感じて彼女を見れば、真っ赤に顔を染めて指をおかしな形にしていた。
でこぴんをされたんだと気付いた頃には、彼女は逃げるように奥へと駆けていってしまっていた。

「こらっ、待てよエアリス」

「ふふっ、待ちませんよーっだ」

子供っぽく笑って逃げる彼女を追いかけた。



〜fin〜



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