夜空に輝くモノ
「星って、アイツに似てるな…」
呟いた言葉は、風にさらわれて、呟いた本人にさえ聞き取りにくかった。
月が冷たい光を放つ時にだけ、光を当てて染み込ませたような銀糸の髪が、光を弾きながら風に舞う。
風が通り過ぎると、さらさらと音を立てて、元通りに落ち着く。
手の中に収まっている小さな袋には、黄色のツンツンした星型のクッキーが、沢山詰まっている。
何だか、よく分からないがアンジールからもらったクッキーだ。
大量に焼いてしまったので、お裾分けだそうだ。
ジェネシスは、『部屋がクッキー臭くなった』などと文句を言いながらも、例の小説片手に美味しそうに食べているらしい。
料理にカメラ…植物の世話やら、子犬の世話まで…器用な奴だ。
そういえば、本当の星もアイツに似ている。
見上げた夜空には、澄んだ空気の中、沢山の星が輝いていた。
常に天空(ソラ)にあるのに、昼間は弱過ぎて見えない。
…弱い。
その光は、闇の中で輝く。
墜ちたり…
流れたり…
何の関係もない星が集まり繋がれて、何かを模したモノになる。
リユニオンか…。
何億光年先だろうとも、さっさと追い付いてこい。
「私は待ってなどやらないからな…」
そう言って、袋からクッキーを一つ摘み上げる。
綺麗に型抜きされたクッキーだ。
「軌跡を残してやるから、辿ってこい」
☆を口に放り込んで、立ち上がる。
振り返り様に放った斬撃は、硬い筈のドラゴンの鱗でさえ簡単に断ち切る。
瞬きさえ長く感じる程の、短い出来事。
続く血を払う動作さえ、鮮烈で華麗。
月下に佇む美しい幽鬼のような雰囲気を纏いつつも、残酷な現実だと突きつける瞳は、同じ蒼天(アオ)。
『忘れるな』と心の中で命じる。
『お前の憎悪を向ける相手は、私一人だ…』
独りで彷徨い続ける銀の風は、今日も何処かで『堕ちろ』と星に命じる。
堕天使の羽根を、目印に残して…
一翼をもぎ取って、引きずり堕としてみせよう、と…
黒マテリアに語りかける…
〜fin〜
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