あの人と見る蒼空(ソラ)
光の洪水…
私は、目を細めて見上げた。
目の奥が焼き付くされそうなくらいの光に少し慣れると、一気に視界が広がった。
真っ青な世界…。
吸い込まれそうな澄んだ青空。
視点を下げると、今度は一面の緑。
ざぁぁ、と色のない風が、その緑を波立たせて、私を通り過ぎる。
…少し肌寒い。
とん。
「ちょっと…寒いな」
背中がキミと密着する。
包み込まれるように回された腕は、温かかった。
「何で、俺たちノースリーブなんだ…」
「くすくすくす…」
耳元で囁くように言ったキミの一言に、私は思わず笑ってしまった。
「え? 何?
変だった?」
「くすくす…
ううん、違うの」
慌てるキミが覗き込んできたから、私はすぐに否定する。
「ん〜…でも、やっぱり変かも」
「えええぇぇぇ!?」
そう言って、もう一度覗き込んできた顔を見詰める。
私たちの上に広がってる青空よりも、澄んだ蒼空がそこにある。
イイ事があると、更にキラキラと輝いてみえる、とてもキレイな蒼空。
『俺が、いつかキレイな空を見せてやる』
と言ったキミは、今、私に沢山の空を見せてくれてる。
でも、一番キレイな空はキミだった。
「ねぇ、ザックス」
「おぅ?」
不思議そうに見詰め返される瞳に、吸い込まれそうな感覚を感じながら、私は言葉で聞きたいと何度も同じ質問を重ねてる。
「もっと、一緒にいてくれる?」
「もっちろん!」
満面の笑顔で答えてくれるキミ。
「だからさ、そんな不安そうな顔すんなって」
キミは、そう言って少し力を強めて抱き締めてくれる。
…とっても温かい。
「俺と一緒なら、恐くない…だろ?」
「そうだね」
本当は違う…一つだけ恐くて恐くて仕方ない事がある。
それは、“キミと離れる事”。
“もっと一緒”じゃなくて“ずっと一緒”にいて欲しい。
でも、それはムリだと言われたら…と恐い…。
だから、私は言葉を胸の奥の水晶(クリスタル)に閉じ込めておくの。
「ありがと、ザックス」
「じゃ、お礼にデート1回…な♪」
約束の空の下。
キミとの一緒の時が、私の約束の地…
〜fin〜
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