〜1枚の羽根〜


『…暇だ…』

中性的で鈴の音のような美しい声だった。

『…こんなに爽やかな月夜に、何故誰もいない?』

そのモノは、布を被り、鎌を持っている。

『あぁ…
銀(シルバーン)…哀しまなくてよいのですよ』

恋人にでも語りかけるような甘い声で、語りかける相手はというと、持っている大鎌だ。
柄の部分の長さだけで3mはある。
刃渡りも1mは超えているだろう。
明らかに、人が振り回せる刃物ではない。
それでも、月光でキラキラと輝く姿は何故か恐ろしい刃物という印象より、神々しい印象すらあった。

『けれど…
泣き声も美しいですね…』

目深に被っている布は、血のように赤い色をしている。
先程まで、鮮血の雨でも浴びてきたかのような妖艶な色だ。
際立つのは、布からのぞく白磁のようなきめ細かい白い肌と艶のある白髪。

『銀の音(シルバーン・ウェーブ)を聴くと“衝動”が抑えられますね…』
「“衝動”って何ですか〜?」

木と木の間から、顔だけを覗かせて声をかけてきたのは、濡れたように黒い艶やかな髪の長い女性だった。
紅い宝石のような瞳が印象深い。

「あっ!
ごめんなさい。
綺麗だったから、つい
突然声をかけたらいけませんよね」

そう言うと、しゅんとなる。

『そうですね…
やはり、挨拶はしないと…
こんばんは、私は見た通りの者です』

死神がそう返事をすると、ぱっと明るくなりニコニコと話しかけてきた。
立ち直りが早い。

「こんばんわ〜。
私はミラー。
見た通りって…秘密結社な人ですか〜?」
『…君の…
ミラーさんの目にはそう見えるのですか?』

死神は興味深そうにミラーにそう問いかけた。

「ぇと…
違うの?」
『大多数の人からは、違う表現で呼ばれますね』

目に見えてパニクっているミラーを、微笑みながら死神は言った。

「“白いヒト”ですか?」
『凄いですね…
それは少数の呼び名ですよ。
私は“死神”です』

“死神”という言葉に反応するように、辺りが静寂に包まれる。

「…しにが…み…?」

その静寂をあっさり破ったのは、意外にもミラーの子供のような問いたげな声だった。

「ぇとぇと〜
そのぉ…
しにがみさんという名前なんですか〜?」

どうやら、死神という単語自体を知らないらしい。

『…そういえば、“衝動”とは何かと聞かれましたね』
「…ぇ?
ぁ、はい」

すっかり忘れていた質問を出され、ミラーは目を丸くしながらもうなずいた。

『答えは“魂刈りの衝動”ですよ…』
「たまがり…」

その言葉を最後に、死神は月光も届かない闇の中に掻き消え、ミラーも死神の残した言葉を呟きながら、その場を去った。
黒い羽根が一枚、夜空から舞い降りる。
地面に落ちてから、そんなに時間も経たずに、その羽根を拾い上げたのは、青年と呼ぶに相応しい若々しい男性だ。
闇に溶け込みそうなローブに身を包んだ、濃紫色の髪と青紫色の瞳の青年。

「無情な神の使者か…」

薄い笑みを浮かべた顔は、見る者全てを恐怖におののかせた。

「この玩具は、私が頂こう」

含み笑いをこぼしながら、青年は羽根を優しく撫でる。

「どんな味か…
楽しみだ…」

深い闇が手を差し伸べる先には、闇を抱えた小さな光があった。
もう光に逃れる術など、ない。
出会わない事が、唯一の逃れる術なのだから…

《おしまい。》





++あとがき++

ぇとぇと〜(汗)
はじめまして〜。
ミラーです。
何か分からないんですけど、話してって言われて来たの。
な、何を話せばいいのかな?
…ぇ!?
は、はははは羽根ぇ!?
羽根の話はしないでください…(暗)
もしかして…あなたも私を苛めるつもり?(ウルウル)
そうだよね…
気味悪いよね…
皆からそう言われてるもの(ドヨン)


…?
早く逃げて?
ヤバい奴が狙ってる!?
そうなんですか!?
まさか、ハンターさん(アイスピックのお姉さん)がこの森に!?←違う
皆やしにがみさんにも伝えなくっちゃっ!!
教えてくれてありがとう〜。

あなたに、主のご加護がありますように…(にこ)

byミラー



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