春夏秋冬‐ヒトトセ‐
―――春
眠りを誘う、暖かな光。
大地は顔を出して、動植物が目覚める。
雪解けの水が緩やかな小川となり、ゆっくりと大地を潤す。
芽吹きの緑で溢れ、残り雪の斑な白が彩る。
―――夏
茹るような暑さ。
蝉時雨が耳を塞ぎ、微かに風と葉擦れの音。
白く輝く太陽が、焦がすように地面を照り付け、真っ青な空と白く大きな入道雲。
はっきりと色分けされたようなコントラストが激しい視界。
―――秋
涼しげな風に、舞う色付いた葉。
色とりどりに着飾り、染め上げる。
大地を覆って、やがては一体となる。
落ちて舞い上げられ、踏みしだかれる。
透き通るような空の下、暖色を纏う。
―――冬
上も下も分からなくなる白銀世界。
吐き出す息は凍り、耳が痛くなる静止した空気。
砕け散る程に儚く破壊される。
鏡のような雪が反射して、肌を焼き尽くす。
軽く降り積もり、重く圧しかかる。
そうやって、一年は巡る。
滞りなく、流転し、定まらない。
時に、窈窕たる淑女のように…
時に、専横な独裁者のように…
巡り続けていく。
〜fin〜
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