つまらない。すっげーつまらない。

何がつまらないって、ルーシィが隣にいないことがつまらない。





「あー…つまんねぇ」

「ナツ今日そればっかだね。そんなにルーシィがいないのが寂しいの?」

「…」

「図星です、あい」





…今日1日ルーシィはいない。


何故ならルーシィは今日、ひとりでギルドの仕事に行ってしまったからだ。


それも…オレ達には何も言わず"ひとり"で、だ。




カウンターに突っ伏してため息を吐く。
グレイが吹っ掛けてくる喧嘩にも、今日は乗る気がしなくて。

適当にあしらうと逆に大丈夫かと心配される始末。

どういう風の吹き回しかわからないが、とりあえず気持ち悪いので殴ろうと腕を振り上げて…止めた。


やっぱりルーシィがいないとつまらない。






「…早く帰って来ねぇかな」




第一、何でオレに何も言わないんだよ。
いつもなら家賃がぁ〜なんて言いながら泣きついてくるのに。



もぬけの殻だった部屋を思い出して眉間にシワが寄る。
…ご丁寧に置き手紙まで残しやがって。




ぽつんと一番目立つ所に貼ってあった"仕事に行ってきます。鍵ちゃんとしめときなさいよ"の文字。



窓の鍵を開けたまま出かけるなんて無用心なことをしておきながら、何とも呑気なその台詞に腹が立つ。
つか、オレが来なかったらどうするつもりだったんだよ!と心の中で叫んでみてもあの星霊少女に伝わるはずもなく。



オレはまた悶々と苛立ちを募らせるだけだった。





「ちぇっ…ひとりで行って怪我して帰ってきても知らねぇからな」



怪我して帰ってきたら自業自得だと笑ってやろうと決めて、この苛々を払拭するため、さっきグレイに売られた喧嘩を改めて買ってやろうと席を立った。


…のだが。




「え?ルーシィがひとりで仕事に行くのは今日が初めてじゃないよ?」

「…は?」





皮肉っぽく呟くオレにハッピーが魚をもぐもぐと口に運びながらさも当たり前のように言う。




何だって…?



立ち上がった姿勢のまま動けなくなる。




「おいハッピー、今の…」

「あっシャルルだ!シャルルーっ!」

「ちょっ!待てよハッピー!」




恋する青猫は誰にも止められず、必死に手を伸ばすも、願い空しく飛んでった相棒の姿にガックリ肩を落とす。



そのままハッピーがシャルルの下へ降り立つのを見送ってから、力なく回転式の椅子に座り込んだ。


まるで風船から空気が抜けていくように身体の力も抜けていく。
と、同時に無性に自分が空しくなった。



ルーシィが時々ひとりで仕事に行くこと知らなかったのはオレだけなのか。



なんだか仲間ハズレにされたようなこの気持ち。
…悔しい。
死ぬほど悔しい。




「何だよ…オレはずっとルーシィと一緒に行ってたってのに…」




毎回泣きついてくるルーシィに、いつの間にか優越感でも覚えてたんだろうか。

ルーシィが頼ってくるのはオレなんだって。
隣でアイツを守るのはオレしかいないんだって。



…だからなのか。
ひとりで仕事に行ったというルーシィに苛々する。
そんな風に思ってたのはオレだけなのかって。



どうせルーシィは"あたしには星霊の皆がついてるし!"なんて笑って言うんだろうけど。


でもアイツの星霊の中にはロキだっているし、星霊達の中でも攻撃力の強いロキをルーシィが頼りにするのは目に見えてる。




「何だよ…ロキに頼るくらいならオレが…」




オレが守ってやるのに。



頭の中に浮かぶのは、お互いを信頼しきって背中を預ける二人の姿。




「…もう知らねぇ!」




腕に顔を埋めて視界をシャットアウトさせる。
ふて寝するオレにミラの笑い声が遠くで聞こえた。






(ルーシィの、ばか)


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ルーシィがひとりで仕事に行ったら、ナツはずーっと不貞腐れてそうだな、と。

次のページ、おまけ程度のルーシィside。







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