登校してくる生徒が必ず通る校門前。
騒がしい生徒たちの喧騒にも負けない存在感を放ちながら、にこやかに挨拶を交わし、生徒服装をチェックする者がひとり。

風紀委員長のイヴ・ティルム、その人。




「レン、はだけすぎだよ。ボタンは第二までしか開けちゃだめだからね」

「…努力する」

「努力じゃなくてちゃんとするの!減点しちゃうよ?」




可愛らしく、にこやかに。
けれども瞳の奥は威圧的に。
有無を言わせない笑顔は、良くも悪くも彼の一番の武器でもある。

現にレンを指導する彼の横を、女生徒がキャーキャー言いながら通りすぎてるし、レンはレンで、笑顔の裏にあるものを感じ取ったのか口を閉じ、黙々とボタンを閉めている。


そんなレンに満足気に今度こそ毒のない微笑みを浮かべると、彼は次の生徒の元へと歩き出した。
そんな彼に登校してくる生徒たちが次々へと挨拶と称し言葉をかけていく。





「イヴくんおはよー」

「おはよう!」

「今日もちっちゃいなー」

「えー?これでも伸びたんだけどなー…」

「イヴくんは可愛いからいいの!」

「ありがとう、君も可愛いよ!お姉ちゃんって呼んでいい?」




なーんてね、とアイドル顔負けのウィンクを女生徒に向けてお見舞いする彼。
そんな彼の冗談に彼女たちは満更でもない様子でその頬を赤らめていて。




…何よ。愛想振り撒いちゃって馬鹿みたい。





思わず眉間にシワを寄せながら、注目の的である風紀委員長サマにジト目を向ける。




可愛い容姿に人懐っこい性格。
おまけに1年なのにも関わらず既に風紀委員長を任されていて。

そのくせ飾らないからイヴくん、だなんてフランクに呼ばれたりもする男女問わず人気者の風紀委員長サマ。




「……」

「あ、おはよう。ルーシィ」

「…おはよ」





…そんな彼はあたしの弟だ。






ないしょのはなし





「ルーシィ…またそんな格好して」

「何よ。悪いの?」

「悪いよ。ボタンは第二までだし、それ第三ボタンまで空いてるよね?あと、スカートも少し短いんじゃないの?」

「…目敏い」

「なんとでも言って」



これも風紀委員長のお仕事ですから。
少し呆れた口調でさらりと言ってのける委員長こと我が弟サマ。


でも少し胸元が見えるくらいに開けたボタン。
膝丈より少し短い、平均よりは少し短めに穿いたスカート。


どれもほんの少し基準よりオーバーしただけなのに、どんな些細な変化もこの風紀委員長サマには通用しないのだから悔しいったらない。




「…弟なんだから少しは見逃しなさいよね」

「その言葉、そっくり返すよ。僕のお姉ちゃんなんだから制服ぐらいきちんと着てよね」

「……鬼」

「はいはい。早く直さないと遅刻しちゃうよ」




にっこりと。
それはもう憎たらしいほどの満面の笑みで手にしたボードに何やら書き込んでいくイヴ。
その横顔を横目に見ながら、こっそりとため息をついた。

ちらりと見えたルーシィ・"ハートフィリア"の文字。あたしの名前。
…そう。あたしとイヴは本当の姉弟ではない。
訳あって小さい頃から一緒に住んでいる、血の繋がりのない姉弟なのだ。

もちろんこれはトップシークレットで、こうやって簡単に姉だの弟だのと言うのだって本当は許されなくて。


…けれど、気持ちを押し込めるにはこうして姉弟だと口にしなくちゃ抑えられなくて。


本当に、厄介な弟を持ってしまったもんだ。
そう心の中で思いながらのそのそとボタンを、閉めていると。




「何してるの?本当に遅刻しちゃうよ?」

「っちょ!?」

「早くしなきゃ僕まで遅刻しちゃうんだけど」

「わ、わかったから!わかったからその手を離しなさい!!」




ゆったりしたあたしの動きに焦れたのか、少し眉間にシワを寄せたイヴがあたしのスカートを直そうと腰に手を寄せる。
確かに、確かにスカート折ってるけども!
いきなり女の子の、しかも腰に普通躊躇わずに触る!?



「ななな何してんのよ!?イヴ!!」

「何って…スカート直してるんだよ?…ああもう、ほら動かないで、直しにくい」

「自分で直せるわー!!!」




慌てるあたしを余所に、更に際どいところまで手を忍ばせるイヴ。
やりにくいのか身体を密着させるように寄せてくるイヴに心臓が爆発するんじゃないかってくらい激しく脈を打つ。



「―――…き……だよ」

「っ!?」




暴れるあたしの耳に囁くように吹き込まれた言葉。
それはあたしの体温を一気に上昇させるには十分すぎるほど強力で。

ああ、きっとすごい女馴れしてるのよね、この子。
なんて冷静に考えたのが0.1秒。




「…〜っのセクハラ風紀委員がーっ!」

「い゛っ…!?」




そんな無自覚なのかなんなのかセクハラなイヴの脳天に思いっきり肘を落として。
痛みに悶えるイヴの腕の中から急いで抜け出した。




「あ、あんたね…っ!いくら女慣れしてるからっていきなりそんなとこ触るなんて非常識よっ!?」

「ったぁ…そんな怒らなくても…」

「怒るわバカ!!」




あたしの渾身の力を込めた肘を脳天に食らったイヴは、涙目になりながら頭を押さえながらこちらを上目に見やる。


そんな姿に少しだけドキッとしつつも急いで身なりを整えてから早口にまくし立てた。





「は、ほらっ!これでいいんでしょ!?じゃあもうあたし行くから!あんたも授業遅れないようにしなさいよ!じゃっ!」

「あ、待っ……」

「ごきげんよーっ!!」





イヴの制止の声も聞かず全速力で校舎へと走り去るあたし。
その余裕の無さに我ながら呆れるが、今はそれどころじゃないのだ。

今あたしの最優先事項はこの激しく高鳴る心臓と頬に灯る熱を誰にも見つかることなく静めることで。
特にあの火竜や青猫にバレないようにしなくては。こんな自分からかい倒されるに決まってる。





「はぁ…っ、熱…」



手の甲で触れた頬の熱はまだまだ冷めそうにない。



一限目はサボり決定かしら…?



仕方ない。これも全部あの風紀委員長…もとい我が弟のせいなのだ。
そう自分に言い聞かせながら、誰もいないであろう屋上へと足を運ぶ。


ついでに今日の放課後入っていた予定をどうやってことわるか必死に考えるあたしは、やはり心底あの弟に惚れているだと思い知った。



ないしょのはなし

(…そんなワルイコには帰ったらお仕置きだよ)





――――――――



ナニコレって感じですよね。
わかってます、自己満です!←

イヴ落書きしてたら不意に思い付いちゃって。
勢いでざかざか書いたイヴルー(弟×姉)何故か風紀委員長というオプション付き←え

キャラを把握仕切れてないのでほぼ捏造ですゴメンナサイ。
でも楽しかった!楽しかったついでにイヴ視点のおまけが次からあります。

えっと、興味がある方はどうぞー!







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