例えばあたしが好きだって言ったら、グレイはそれを信じるだろうか。


信じて、それであたしを受け入れてくれるのだろうか。




「………なんて、そんなことあるわけないじゃない。」




彼のあたしに対する態度は仲間のそれと変わらないし、特別あたしを意識するようなところは見られない。

それに彼はきっと…





「ルーシィ?」

「っあ、な、何?」

「いえ、ぼーっとしてたので…大丈夫ですか?寝不足?」

「ううん!大丈夫よ。ありがとう、ジュビア」

「はい、それじゃあジュビアはグレイ様の所へ行ってきます!」




心配そうに顔を覗き込むジュビアに、慌てて頭を振って大丈夫アピールをすると、安心したのかにっこりと笑ってグレイの下へと駆けていった。


そんなジュビアの後ろ姿をぼんやりと見つめて思う。



…可愛いな、ジュビアは。




恋に真っ直ぐで、自分の気持ちにすごく素直で。
それに、そんな彼女にグレイも少しずつだけれど気を許してきている気がする。


ふと視線を移すと、マカオ達と話していたグレイが、ジュビアに気づいて小さく笑ってて。
口ではまたかよ、なんて悪態づいてるくせに、その手のひらはジュビアの髪を優しく撫でる。


そんな彼の行動に頬を赤く染めながらも嬉しそうに口許を緩めるジュビアを見て、少しだけ胸の奥が痛んだ。




「ルーシィ」

「ナツ…?何、どうしたの?」

「痛ぇのか?」

「え?」

「さっきからずっと痛そうな顔してるぞ」

「あ…えと、違うの、これは…」




どうやら心配して来てくれたらしいナツがあたしの頬を擦る。
その手の温かさに、涙腺が緩みそうになって、慌てて俯く。
そんなあたしに、ナツがぼそりと呟いた。



「…無理すんなよ」

「え…」

「オレそういうのよくわかんねぇけど、我慢すんのは良くねぇと思うぞ」




ルーシィらしくねぇ。
そう真っ直ぐ見つめてくるナツに、思わず視線を逸らす。

普段は鈍感なくせに。
なんで、こんな時だけ……


頬を包む体温に、その暖かさに緩みそうになる涙腺をぐっと堪えて笑顔を作った。




「……ありがとう、ナツ。あたしは大丈夫だから!」

「ルーシィ」

「ジュビアの言った通り寝不足なのかも。またボーッとしてナツに心配かけないように寝てこようかな」

「……ルーシィ」

「じゃあまたね、ナツ」




まだ心配そうに見てくるナツにわざと明るく返して、ナツから離れる。
本当は縋ってしまいたい。
一人で抱え込むには大きくなりすぎたこの気持ち。

……話せたらどんなにいいだろう。




でもごめんね、これは誰にも秘密なの。
あたしの想いがふたりの邪魔になるのなら。

誰にも内緒で、ひとりで消化するべきなのだ。


気持ちに蓋をして鍵をかけて、心の奥底にまで沈めなければ。
誰にも言わずに、ひとりきりで。



……ああ、辛いなぁ。



”誰か、助けて”



これは決して、恋なんかじゃない。




言えないSOS






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