「あー…甘いものが食べたい」 ギルドのカウンターでグラスのストローをガジガジとやりながら呟く僕に、何故か固まったまま動かない彼女。 もとい、僕の愛しいご主人様。 「どうしたの?ルーシィ」 「…あんたがそんなこと言うの意外で」 「えー?僕だって甘いもの欲しくなるときくらいあるよ?」 心外だなあ、と笑ってみせると、まだ少し納得のいってないような表情で僕を見るルーシィ。 やっぱり変よ、だなんてぼそぼそと呟くルーシィに、えー?だなんていつものごとく軽い相槌を打ちながら噛みすぎて平べったくなったストローへと唇を寄せて。 「、苦…」 口一杯に広がったコーヒーの苦味につい眉間にシワが寄った。 別にコーヒーが苦手なわけじゃないんだけれど、今は糖分を欲してるせいなのかすごく苦く感じる。 …無性に甘いものが恋しい。 「んー…」 「…本当に珍しいわね、あんたがそこまで甘いもの欲しがるなんて」 ついには机に突っ伏した僕を見て、心配そうにルーシィがその白い手を伸ばしてくれる。 僕の髪を撫でる彼女の手が気持ちいい。 その心地よさに目を閉じて浸っていると、頭上から聞こえる優しい声。 「なんか…大きい猫相手にしてるみたい」 「ん…獅子だからね」 そうね、と笑う彼女はとても可愛くて、心臓がきゅう、と締め付けられる。 彼女が身動きする度、艶やかな蜂蜜色がさらりと揺れて。 そんな光景を綺麗だな、なんて眺めていると、僕を撫でていたルーシィの手のひらがゆっくりと離れていった。 …うん、本当に反射的だった。 「そういえばレビィちゃんが新しいカフェが出来たって…」 「ルーシィ」 「え…」 僕から離れようとするルーシィの手を腕ごと掴んで止めれば、振り向いたルーシィからふわりと香った、花のような甘い香り。 鼻腔を擽ったその甘い香りに、心がざわめく。 このまま…離したくないと。 …ああ、そっか。僕が食べたかったのって… 僕の中で膨れ上がる、このどうしようもない気持ちの正体に気づいてしまった。 「ロ…」 「黙って…」 「っな…」 引き寄せたルーシィが近づくと共に自然と傾けた顔に、心の中で苦笑する。 我ながらなんて単純な、と思うけど、とてもこの欲求を抑えられそうもない。 「んっ…!」 「すごく、甘いね…」 柔らかな髪が頬擽って。 待ち望んだ感触に、甘い刺激が全身を駆け巡る。 …たまらない、この感じ。 触れた唇は、溶けてしまいそうなほど甘かった。 「っ…!」 「…ごちそうさま」 わざとらしいリップ音をたてて解放すれば、瞬間、真っ赤に染まる愛しいご主人様。 そして満たされた僕の心。 …なるほど、どうやら僕は発情期らしい。 perfume (欲しいのは、君) ――――――――――― 獅子並みの嗅覚で、無意識にルーシィの甘い匂いを感じて無意識にルーシィを求めてればいいなあ、と。 …そういう妄想です← ← → |