ナツの笑顔が大好きで。
笑顔を見るたび、心が暖かくなった。

なのに、何故だろう。
……あんたの笑顔、今は見たくない。


−…
−−…



「リサーナ!」


…ああ、今日も。
ナツの視線はあの子のもの。



死んだと思われていたリサーナがエドラスから戻ってきて。

リサーナの帰還にミラさんやエルフマンはもちろん、ギルドのみんなが大喜びで、あたしは直接一緒にいたことはないけど、それでもリサーナの帰還はすごく嬉しかった。

それに気さくに話しかけてくれる彼女とはすぐに打ち解けることができた。


なのに…


「リサーナ早くしろよー」

「待ってってば!」


なのに最近はリサーナを見るたび、心がもやもやする。
…違うな…リサーナに近づく"ナツ"にもやもやするんだ。


ぼーっとそんなことを考えていると、仕事に向かうらしいナツとリサーナがこちらに向かって歩いてきたようだ。


(…っ!)


どうしよう…!

一歩、また一歩と2人が近づいて、それに比例するようにあたしの心臓もざわめきだす。


2人から顔をそらして、でも内心ドキドキしながら、近づいてくる足音に反射的に目をぎゅっと閉じた。


「−でな、ハッピーが…」

「あはは、本当に〜?」

「おぅ、それで…」



(…え……)

声が遠ざかっていく。
足音も、もう聞こえない…

…なんで、どうして。
いつもだったら必ずあたしに一言声をかけるはずなのに。
"よぉルーシィ"って笑顔で呼んでくれるのに。

勢いよくナツたちの方を振り返ると、そこにナツはもういなくて。


「…気づかなかっただけ、よね…?」


…そんなにもリサーナに夢中だった?


「だってリサーナはナツの特別、だもんね…?」


…あたし、よりも…?


「当たり、前…じゃない…」


リサーナとナツはあたしの入る前からの仲で、すごく仲良かったっていつかミラさんから聞いた。

だからリサーナが帰ってきて一番嬉しいのはナツなんだってわかってる。

わかってるのに…


「…嫌な女だ、あたし…」


何にも知らないリサーナに嫉妬して、ナツの笑顔が自分に向けられないことにイライラして。

黒い感情がぐるぐると渦巻いていく。なのにそれを止めることもできないなんて。


「どうした?」

「…っグレイ」


不意に聞こえた声に、俯いていた顔をあげるとそこにはグレイが微笑んでいて。

その優しい笑顔になんだか泣きそうになった。


「・・・ナツ、か?」

「っ・・・違う」

「嘘だな。・・・隠してもわかる」

「…っ…」

「…意地っ張り」



呆れたような溜め息が頭上で聞こえたかと思うと、次の瞬間にはふわ、と暖かい温もりが頭の上に乗っかって。

それがグレイの掌だと分かった時には既にあたしの涙腺は決壊していた。


「うぅ…っふ…うあぁぁ…」



気づけばグレイにしがみついて止めどなく流れる雫がグレイの服にひとつ、またひとつ、と染みを作っていく。

小さい子どもをあやすように背中触れたグレイの掌が少しだけアイツを忘れさせてくれた気がした。





(きみは変わらない笑顔で)

(…あの子にも微笑むの)







一度やってみたかったんですリサーナ帰還後ネタ!
いやぁ…最後グレルーぽくなっちゃいましたね。
でも一応ナツルー…かな!
何故かうちのグレイのイメージはどうしてもお兄ちゃんって感じなので(笑)
でもまぁとりあえずルーシィ泣かせたかったんです!←


お題:きみは変わらない笑顔で
確かに恋だった様からお借りしました!



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