「明けましておめでとうございます」 「明けましておめでとうございます」 「おめー!」 いつものように侵入された部屋で、背中を丸めてお辞儀する。 東洋のお正月を迎える挨拶だとか騒ぐナツたちの言葉に興味が湧いて、それに習えば、なんだか新たな一年の始まりを実感できた。 「ふぅ……なんだか改まってあんた達とお辞儀するなんて少し恥ずかしいわね」 「そうか?」 「オイラ達毎年やってるから何にも思わないです」 意外にも綺麗な所作でお辞儀した二人に驚きつつ、そう言えば、頭に?を浮かべた二人に首をかしげられた。 まあ、そうよね。 意識せずにしてるんだから分かんないわよね。 気恥ずかしい。 正確にはナツに大しての照れ隠しの言葉。 いつも暴れてる礼儀なんてどこ吹く風なナツがあんなに綺麗にお辞儀できるなんて思わなくて。 ギャップ萌えというやつだろうか、なんだかきゅんとした気がした。 ……って、どこにギャップ感じてるのよあたし…… 「ルーシィ!お年玉くれ!」 「っ、そんなのあるわけないでしょ 」 「ケチ」 「うるさい!」 突然視界に入った来た桜色に驚きつつ、今年も変わらず距離が近いことに内心苦笑する。 そう、今年も変わらず仲間の距離感なのだ。 ナツのパーソナルスペースがもともとやけに近いことはこの数年で分かってきた。 本人が全く意識してないってことも。 「はぁ……」 「ルーシィ今年の目標何にした?」 「目標?」 「俺は食いたいもんは全部食う!」 「なんなのその目標」 「オイラはね、お魚10000匹食べる!」 「何で二人とも食べることなのよ……」 相変わらずよくわからないフィーリングを見せる二人に呆れながら、自分の目標を考える。 「そうね、あたしは……現状打破かしら?」 今年こそはもう一歩先へ進みたい。 そんな願いを込めて立てた目標に、二人がまた首をかしげた。 「なんか壊したいもんでもあんのか?」 「うん、ちょっとね」 「なんかルーシィ段々ナツに似てきたね」 あんだけ壊すなっていってたのに自分から壊したいなんて。と不思議がるハッピーとは逆に、ナツはじゃあ仕事一発目は討伐系だな!なんてどこか楽しそうだ。 「あのねぇ……別にあたしは本当に建物壊したいとかじゃないんだからね!?張り切りすぎて色々壊さないでよ!?」 「わかってるって」 「その顔は絶対わかってない!」 にまりと口を緩めるナツに釘を指しながら、腹が減ったと騒ぎ足したナツ達に、ミラさんから教わったおせち料理を振る舞う。 ようやく出したな!という言葉に、今日の狙いはこれか、と息をはいた。 なんとも二人らしい侵入理由である。 「ほら、ゆっくり食べないと口許ついてるわよ?」 「んお?」 「オイラ拭くもの取ってきます!」 台所まで布巾を取りに行ったハッピーにありがとう、と伝えて目の前の男に視線を戻す。 ひとしきり指でぬぐってやれば、さんきゅ、と返された。 いいわよ別に。とそうかえそうとした時だった。 「っ、ナ、ナツ?!」 ぱくん。 効果音がつくならその音だろう。 なんの前触れもなく、ナツはあたしの指を舐めた。 どうしよう、何で?! 動揺が隠せないあたしに、ナツが呟く。 「ルーシィ、オレの目標覚えてるか?」 「え?えと……食いたいもんは全部食う?」 「おう。だから……」 一瞬、目の前が暗くなった。 と、同時に訪れた柔らかい感触に頭がショートする。 「……覚悟しとけよ?」 そう良い放ったナツの顔がいつもと変わらなくて。 なのにいつもと違うこの状況に、頭がついていかない。 「お待たせー!……あれ?ルーシィ顔真っ赤だけどどうかしたの?」 「なんでもねぇよ、な?ルーシィ!」 「……うん……」 どうしよう。 今年の目標もう達成しちゃったみたいです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー こういう時期ネタあんまりやってないなと思って。 何はともあれ、皆様本年もよろしくお願いいたします。 ← → |