ゆらゆら、ほわん。



薄茶の波が円を描いて揺れる。

角砂糖を落とせば、甘い香りがふわりと広がった。




「今日もお疲れ様」





甘くてほろ苦いそれは、荒れた心に染みるようにゆっくりとあたしを温めてくれるのだ。






カフェ・オレ






ふー…と息を吐けば、今日あった嫌なことが少しだけなくなったような、そんな気持ちになって。
ほっと一息ついたその時。




「ルーシィーー!」




ゆったりした空気をぶち破るかのように響く声に、心臓が跳ねる。

思わず落としてしまいそうになったマグを慌てて掴んで、安堵のため息を溢す。
中身をこぼさないようにそっと机において、どうせしれっとしてるであろう元凶を睨もうと後ろを振り返って。


…あれ?



「…ハッピーは?」




いつも一緒にいるはずの青猫の姿が見えない。




「あー…今日は帰った」

「そう…ってじゃあ何でアンタはここに来てんのよ!てか何度も言うけど不法侵入なんだからね!?」

「うるせぇな、家主がいるんだから不法じゃねえだろーが」





あたしが然して驚かなかったことが不満なのか、唇を尖らして不機嫌丸出しのナツがどかりとソファーへと乱暴に座り込む。


…どうやら帰る気はないらしい。




はぁ、とため息をつけば、気に入らなかったのか更に不機嫌そうに眉間にシワを寄せたこの男。






「何よ、その顔」

「べっつにー…ルーシィ、茶ぁー」

「あんたね…」









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