「何怒ってんだよルーシィ」

「別っ…っつに?何も怒ってないけど?」

「すげぇ怒ってんじゃねぇか…」




ふん、と鼻を鳴らして大股で歩く。
ナツを振り払うように足早になるペースにナツがチッと舌打ちをしたのが耳に届いた。


…何よ、舌打ちしたいのはこっちの方なのに。



思い出すだけでもムカムカする。
こんな思いするなら行かなきゃ良かった。
思い出してぐっと唇を噛んだ、その時、不意にナツが腕を引っ張った。




「とりあえず止まれって。こんなんじゃ話もできねぇだろ」

「…別に、あたしは話なんてないもん」

「嘘つけ、眉間にシワ寄ってんぞ」

「……」

「本当にどうしたんだよ…楽しくなかったのか?リュウゼツランド」



なあ、と肩に回された腕に、思い出したくもない光景が浮かんで、思わずやめて!と振り払ってしまった腕。
そんなあたしの行動に、ナツが驚いて目を見開いた。



「んだよ…」

「……」



「だって…ナツが悪いんじゃない」

「あ?」

「ナツがっ…女の子の水着姿見てるからっ」

「はあ!?み、みてねぇって!」

「見てたわよ!顔赤かったの知ってるかんだからね!このスケベ! 」

「スケッ…!?」




顔を真っ赤にして口をぱくぱくさせるナツをキッと睨む。
そんなあたしにたじろぎながら、ナツが視線をぎこちなく逸らした。
それは紛れもない肯定の証で。




「っやっぱり見てたんじゃない!!」

「し、仕方ねぇだろ…っ男なんだから!」

「何それ逆ギレ!?サイッテー!!」




うぐっ…と言葉を詰まらせるナツ。
やっぱりと思う反面すごく悲しくもなった。


本当は分かってる。ナツも男の子だし、そういうことに興味あるって。
でも、だったら何であたしじゃないの。


何で、他の女の子なんか見るのよ。



「…ナツのばか…」

「ルーシィ…?」

「……見るならあたしを見ればいいでしょ!?いっつも勝手にお風呂とか覗くくせにっ……なんで、他の女の子なんかっ……」

「は……」

「嫌だったんだからっ……!自分でもよくわかんないけど嫌だったの!他の子見るくらいならあたしをっ……っむぐっ」



激昂して止まらないあたしの口を、ナツの手が塞ぐ。
何すんのよ、と続けようとした言葉はナツの意外にも大きな、男の手の感触に喉の奥へと飲み込んで。
振り払おうとした手は、その俯いた顔の赤さに力を無くした。



ナツが、真っ赤だ。



あたしの燃え上がる嫉妬心に移されたんじゃないかってくらいに、今にも顔から火が出そうなほど、彼の顔は赤い。



「ナツ……?」

「……っはあああ……」



重い重いため息を吐き、乱暴に頭をかいてあたしの腕を掴むと、そのままズルズルとあたしを引きずってどこかに連れていこうとするナツ。




「ちょ、どこいくのよ!ってか、はなして……っ」

「っるせぇ!ルーシィは黙ってろよ!」

「な、なんなのよ……」



何を言っても黙ってろとしか言わないナツに負けて、大人しく後ろを歩く。
捕まれた右手が燃えるように熱い。


(火傷しちゃいそう……)


実際にする訳はないのだが、どうもそう感じてしまうほどナツの手は熱くなっている。



「ね、ねぇ……どこいくの?」

「…………」

「……ねぇってば…………」



だんまりを決め込んだナツに、いつまでこのままなのかな、と思いながら人気の少ない物陰に足を踏み入れた時。
唐突にその熱は消え去っていった。



ダンッ!!!



と同時に両耳に痛いほどの音と振動が伝う。

まるで囲うように伸ばされた腕に、逃げ場を失って。
キッと睨んでくるつり目の奥の炎に身体の自由も失った。


「…人目って言葉知ってっか?ルーシィ」

「う…………だ、だって腹が立ったからつい……」

「つい、じゃねぇよ。すっげぇ恥ずかしかったんだからな!」

「ごめんなさい……」



一体何故あたしはこんなに怒られてるんだろうか。
腹が立ったからって大声だしたのは悪かったかもしれないけど。
でも、ナツにだけは言われたくない。
いつも感情に任せて行動する、それこそ人目なんて気にしない、あの火竜だけには。


そう思って反撃しようと口を開いて、
……何かを考え込むようにあたしの肩に頭を乗せたナツに、またしても言葉は消え去った。




「…………」

「……あ、の……ナツ?」

「…あと…あんなの聞くなら二人の時のがよかった」



あんな、大勢の前じゃなくて。


おおよそナツの言葉とは思えない台詞に、心が揺れる。
だんだんと激しくなる鼓動を押さえようと、ぎゅっと胸の前で手を組む。



その時びくりとナツが揺れて、そのあとゆっくりとした動きで、組んでいた手をほどかれた。
絡ませるようにしながら押さえつけられた手に、その行動に、なんだか彼の顔が見れなくなって。


とうとう俯いたあたしに、ぼそっとナツが呟いた。


「…………のか?」

「え?」

「…………ルーシィ」





ぐっと距離が縮まる。
さっきの炎が視界でいっぱいになって。






「……ルーシィの全部、見てもいいのか?」







……告げられた言葉を理解する間もなく、あたしは炎に全て食らい尽くされた。




お熱いうちにお召し上がりください。
(結局、火傷しちゃった……)





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いつぞやのナツルー。
眠ってたんで掘り起こしてみました。


……そしてどうやっても、R指定に行きそうな展開しか思い付かなかったので強制終了。(汗)
内容薄くてすみません( ;∀;)










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