…夢だと思った。
あれは酷い悪夢だったのだと。
バイトで疲れてたから、あんなに恐ろしい夢をみたんだ。
そうだ、そうに決まってる。
でも、瞳を開いた時に見えた両腕の枷が夢ではないと俺を現実に引き戻した。
「………」
身体が重くてだるい。頭が酷く痛い。
だから眼だけで辺りを見渡す。意識を失う前と同じ部屋だ。そして同じようにベッドに拘束されている。
窓に眼をやるが遮光カーテンのせいで現在朝なのか夜なのか全くわからない。
だがこの部屋に幸運にも男、…早河の姿はなかった。
今だけいないのか、それとも別の部屋にいるのかはわからないが、
もしかしたらこれは逃げるチャンスか?
こんなところにいつまでもいられない。いつ殺されるかもわからないし、あんな風に快楽漬けなんてもう二度と嫌だ。
確かに俺にも非はあるが、それにしてもこんな仕打ちは酷すぎるだろう。
…だから早河がいない隙をみて逃げ出さないと…。
俺は、身体を伸ばして手の枷を口で外そうとする。
だが、予想以上に身体が悲鳴をあげて伸ばすこともままならない。
やっとのことで口が届くようになってから枷を外そうとするが、
革製のそれは簡単に取れないようになっているらしく、ましてや口でなんて外せる訳なかった。
「…っくそ!…外れろっ!」
最後は力づくで引っ張ったりしてみるが結果は同じ。ただ痛み、疲れただけだった。
…ならば、このベッドヘッドごと壊すしか…、
と、力づくでベッドへッドを壊そうと身体に力を込めたとき。
「…がぁ…っんっ?!」
ヴヴヴ…
と身体の中…、尻の中が震動し始めた。
突然の事に驚く。みれば、脚の間からコードが出ているではないか。
って事はこれはローター…?なんで俺気づかなかった…!?
なんとか拘束されている脚を動かしてローターを外に出そうとするが、そうする度に震動が強くなっていっている気がする。
それに、動いたせいでローターが良い所に当たってしまって…。
「…っぁあ゙あ!っん、んんん…っ!」
一人、仰け反り喘ぐ。
「…っひ、はっ!…ぁ゙い゙…ぃっや゙あっ」
「…んんぅ゙っ…んっんっんっ!そ、っこ、ゃ…ぁっ!」
身体から消えたと思っていた感覚が、また蘇り始める。じわじわと身体の内部から沸きだしてくるようだった。
「…んっ!んっ!んんンッ!ぁ、あああっだめ!イっ…!」
ビクンッと身体を反らせ呆気なく達した。
…だが、ローターは止まるどころか激しく震え続けている。
イったばかりの身体にそれはかなりきつかった。
「……ぁ゙っっ!っ、だめ!い、あぁ゙っ!!」
苦しさと快楽をどこに逃がしたらいいのかわからず、ベッドの上を悶え、暴れた。
「…んんんっ!っぁ゙!ま…たっ!ィっ…ぐぅっ」
前立腺を押し潰すローターによって休む暇もなく立て続けに絶頂がくる。
「…っあっあ、あ!っぃ…っんあ゙ぁあ!」
眼が覚めてまだ数分しか経っていないのに。どうしてこんなにイかされているんだろう。
意識を失う前も恐ろしいぐらいの絶頂を繰り返した。死ぬんじゃないかと思うくらい辛かった記憶がある。
それほどイかされたのだ。今だってもう出るものも色はなくそれがイった証なのかすらわからない。
「…っも、ゃらぁ…っん!は、ぁ、ぁめっ、て…」
もう限界だった。連続してイく事がどれだけ辛いか。
…だんだんと意識が遠退いていく気がした。でも良かった。
こんなことなら気を失った方が楽だと本気で思ったから。
「おはよう成田」
「……っん…、ぇ…?」
急に中のローターが弱まった。
声のした方に恐る恐る眼を向けると、扉の所に早河が立っていた。こちらを見て微笑んでいる。
「どう?脱出出来そうだった?」
「はぁ、…はぁ…は…」
…なぜ、バレている?
傍で聴いていたのか?
折角意識が遠退きそうであったのに驚きと恐怖とで引き戻されてしまった。
硬直して驚いている俺に、張り付けたような笑顔で早河が近付いてくる。
「でも残念だったね。この枷、簡単には外れないんだよ。況してや口でなんて」
枷を指でなぞる。
まるでその存在をわからせるかのように触れるから、俺は腕を動かして指から逃げた。
……やはりどこかで見ていたんだ。俺のしたこと、全部知ってる…!
「そもそも…折角捕まえた小鳥を僕が逃がす訳ないしね。だから無駄な抵抗は止めた方がいいよ。
この部屋には無数のカメラがあって僕がいなくても君のしてることが全部わかるし、」
早河が手のひらの中にあったリモコンを見せた。
「お仕置きされちゃうからね。
そ、今みたいに」
隠しカメラに遠隔操作できるローター…?
俺はゾッとした。
と同時に絶望した。
逃げようとすればイき地獄、大人しくしていてもイき地獄。
どっちみち俺には逃げ場なんてなくて。こいつに捕まったのが最後、死ぬまで弄ばれ酷い仕打ちを受け続けるんだと。
「今回もまたいっぱいイってたね。どうだった?でももう色も量もないし、限界なのかな?」
早河はベッドに腰を下ろし、俺の腹の上に出された透明に近いそれを指で弄った。
「…ぃ、…や…だ」
「わ、声がらがら」
俺も自らの声に驚いた。
そういえば眼が開いている時は喘いでいる以外他になかった。それでは喉も掠れるだろう。
それに喉も乾いてヒリヒリと痛い。
水が飲みたい、とこの時初めて思った。
そんな俺の心を読み取ったのか、早河が
「お水飲みたい?」
コップに入った水を、どこからか取り出した。
「………み…ず、」
「そう。飲みたい?」
飲みたくない訳ない。だって拉致されてから喘がされ続けて一滴も水分を摂ってないんだ。
喉はカラカラだ。
「…………」
だから素直に頷いたが。
「それじゃああげられないね。もう少し我慢しようか」
あろうことか、俺の目の前でそれを飲み干したのだ。俺は呆気にとられ声も出ない。
「そんな頷いただけで僕があげるとでも?欲しいのならきちんとお願いしなきゃ」
「…そ、な…」
「君はまだわかってないのかな。僕が君の全てを握ってる事に。
まぁ…僕に従わなきゃ苦しいのは君だからいいけどね」
愉しそうな声で早河は言うとベッドをおりて出口に向かう。
「いつまで抵抗するつもりなのかわからないけど、精々頑張って」
それから早河は出ていって、再びローターにスイッチが入れられた。