鹿とシたいって、心の底から思った。
だから自ら誘って、鹿に身を預けたのに…。
「…いっ!…はっ…」
………痛いっ!
壮絶に痛い。
あれ…、前回、こんなに痛かっただろうか。
酔っていたからわかんなかったとか…?
どちらにしろ、今はこんなにも痛い。あまりの痛みに泣きそうだ。
「痛いですか…、紫さん…」
苦しむ俺を心配した鹿が腰を止めてそっと俺の頬を撫でた。
「…、はは…やっぱ酒飲んどいた方が良かったかも…」
嘘でも大丈夫、と言えば良かったのかもしれないけれど その範疇を越えた痛みだったから嘘なんてつけなかった。
「…シラフやと余計な力入ってまうんやろな…ああもうくそ、ええから大人しく受け入れろや俺の身体め」
いつまでも中途半端な挿入は俺も辛いし鹿も辛いと思う。
だから俺は、はあーと息を繰返し、なんとか身体の力を抜こうと努力した。
「…僕も手伝います」
そんな必死な俺をみて、鹿も手伝い始めた。
片手で俺のを抜き、もう片手で乳首を弄る。舌で俺の首筋を這うように舐められると背筋がぞくぞくとした。
「…っはあっんく…っんなしたら…イってまうから…っ」
鹿の全身愛撫のお陰か、俺の意識が段々と尻から逸れ始めたとき、
その隙を見逃さなかった鹿が一気に根元まで俺を貫いた。
「……っっっああ゙あ゙!!」
「…すいません、乱暴で…」
「…っひぅ…っあ…んな…いき、なり…」
「ごめんなさい紫さん…でも痛いのは一瞬の方が楽かと思いまして…」
……確かにそうかもだ。じわじわと痛いのを長く受けるより、いきなり強く痛いのを受けたほうがどちらかといえば楽やもしれない。
確かにそうかも。でも、でも。
痛いものは痛くて、俺は情けなくも堪えきれずに涙を溢した。
「…っ!あっあの…っごめんなさい!ほんとに、ほんとにすいませんでした!」
それをみた瞬間に鹿が凄い焦りだして身体を動かすもんだから、俺の中に入ってるもんも当然に動くもんで。
挿れられたばかりの敏感な内部には些か痛いものだったから、思わず
「……〜っ!いっ…鹿っ痛い、から!」
ツッコミを入れるみたいに鹿の頭を叩いてしまった。
「あっ…ご、ごめんなさい…」
途端に大人しくなる鹿。
それが、まるで大型犬のようで可愛らしくて、
叩いてしまった頭をそっと撫でて ハグを要求した。 すると俺の求める通り、優しいハグをくれる鹿。
それにより、一層挿入が深くなったけどなんとか声は抑えた。
「……俺達、今一つやんね」
「……はい」
身体の中に感じる別の熱。それは熱くて熱くて、中から俺を溶かさんとばかりにじわじわと犯していく。
それが心地好かった。まだ痛いけど、泣くほど痛いけど、
それで愛する人と繋がれると思うと我慢できた。
?
……愛する人、。
自分の中で溢れた言葉に疑問を覚えた。
愛する人 だなんて。鹿は男で相方で、それ以上でもそれ以下でもなかったのに。
今は、こんな風に思える自分が少し信じられなかった。
でも今はこのままでもいいかなって。酷く居心地が良いから
鹿と、このまま溺れても。
「…鹿。――ちょっと…動いてみて」
「…へ、動いても大丈夫なんですか…?!痛くは…?」
「痛ぇわ。痛ない訳ないやろ。でも、このままじゃ埒あかんやん。なら、少し乱暴でも 快楽、引きずり出してほしいん」
上目使いに求めれば、ゴクリ、と鹿の喉が上下した。全く、なんつー反応してるんだよ。
「……わかり、ました。ゆっくり、しますからね」
そっと囁いて俺の頬を撫でた鹿が、ゆっくりと腰を引き始める。
やっとの事で埋めた熱い塊がずるずると抜けていく。
「ぁっ……っぅ…」
そして恐らく半分ほど抜いたところでまた埋め込み始める。それにより再び内臓を押し上げる圧迫感と内壁を擦る痛みが俺を襲った。
「ぁっぅ、はあ、はあ゙…っっぐっ!」
「……紫さん」
苦しみから俺を救おうと、鹿がまた愛撫を始める。
ちゅう、と乳首を吸われて、ビクンッと身体が跳ねた。
なんだか、それがもうどこからくる快感で痛みなのかわからなくなった。身体の中で全てがごちゃ混ぜになって もう、何が何だか…。
その時、
「…っくあぁん!」
突然の強い刺激に涙が零れた。晒された喉がひくひくする。
脳が分類したそれは、どうやら快楽。
痛みと淡い快感の中から急に現れた強く苦しい程の快楽に驚いて 鹿をみると、彼は笑みを浮かべながら
「…さっき愛でていた前立腺ですよ」
その熱い切っ先で前立腺を撫でるように腰を動かす。
「…ひっ…あっん…」
「ここを擦りますから、前立腺に集中して下さいね」
そう告げると、鹿はゆっくりとだけれど腰を揺らし始める。
前立腺を尖端で押すように突かれると気持ち良くて形振りとか構ってられなくなった。
「…っああ!っやば…ひっぁ、気持ちええ…っ」
酔った勢いでしてしまった初体験の時の快感が甦る。そう、こんな風に気持ち良かった。
もう自分が自分でなくなるくらい男のくせに中で感じまくって。乱れまくって。やめないで、と思う程だった。
その気持ちが今ならわかる。もっともっと、もっと欲しい。鹿の全てが、欲しい。
「あん!ぅあっ…んっ!もっと…、気持ちええとこぐりぐりぃして…っ」
「紫さん…。っこう、ですか」
「…くはぁっ!あ!あ!ええょ鹿あ…っ」
俺がねだればくれる鹿。
恥ずかしい言葉を吐いてるって自分でもわかってる。でも、恥ずかしい言葉を言えば鹿のが更におっきくなって、俺をもっと気持ち良くしてくれるから態と煽るんだ。
「…ふぁっ…っあ!し、しかぁっ…!」
さっきまでゆっくりだった鹿の腰の動きも、打ち付けるような、中を抉るような。だいぶ速いものになっていた。
鹿、と
名前を呼んで、視線を合わせれば そこには嘗てみた雄々しい鹿の姿があった。
猛る炎を瞳に宿し、壮絶な男の色気を纏う鹿は普段のワンコ振りからは想像も出来ないくらい いやらしく、かっこよかった。
喰われている、まさにそう思わせる圧。
俺の全てを征服しているかのような鹿の男らしい眼にぞくぞくと身体中が奮えだす。
(……壊れそう)
明日仕事なのに、と大事な事を思い出したが それも与えられる快楽によってすぐに忘れてしまった。