最近、なんだかおかしいんだ。
街の景色、学校の雰囲気、アニキや水瀬。
そして如月。
そうは言うもこれらは何一つ変わっちゃいない。いつも通りで普段と一緒。
だから多分、おかしくなったのは俺だなって。
「…あー…。んー…。」
調子がでない。やっぱりどうも変だ。気のせいじゃない。
もしかしたら大嫌いな野菜を食べさせられてるからかも知れない。だからこんな、
「……」
首に付けられた赤い首輪に触れる。如月に外すな、と命令されたものだ。忠犬よろしくあの日から着けてるけどさ、実際着けたら何となく違和感感じなくてなんか怖い。慣れって危ない。
「すっかり飼い犬じゃんかぁ…」
アニキだけならいいって思っていたのになぁ…。まさか如月に付けられるなんて。
…今日も例のごとくお仕置き部屋スタートだった。昼休みに散々啼かされて意識が戻るともう次の日の昼間……って展開がここんとこ多すぎる。
まぁ家に帰ったところで一人だし、風呂とかも如月がなんとかしてくれてるから不便はないけど。
「あーあ。…なんだかな」
一人では少し寂しいベッドの上に寝転がる。今も如月は会長室で仕事をしてしまってるから部屋には俺一人。
俺がおかしいのには理由がある。やはりというかやっぱり原因は如月だ。
如月は俺を抱く度に厳しくするが、時々優しくもする。
俺自身、もちろん優しいセックスの方が好きだけど…でも不意に優しく微笑んだり、撫でられたりとか俺は戸惑って仕方がない。
厳しくされて優しくなんてされたらほだされてしまうってもので。
……多分、簡単にそう思ってしまう理由は単純に俺が優しくされ慣れていないからだと思う。
そのせいで、如月が微笑んだり、頭をそっと撫でられたりするとよくわかんない感情が溢れてきて大人しくしていられなくなる病が酷いんだ。
これは前に比べるとなかなか激しくなってるから問題で。
それで情緒不安定、なんて如月にバカにされてるけど俺だって困っているんだ。治せるなら治したい。
だって気持ちを抑えられなくて最終的に如月に怒られるのがいつもの流れだからだ。酷いときはうるさいからと猿ぐつわを噛まされる程で、噛ませたままそのまま放置だから辛いものがある。
「っっもうわかんね!」
なんとか一人で解決しようと考えてみたけど無理だった!
むしゃくしゃして手元にあった枕をぶん投げた。
けど力み過ぎたせいか全く距離は飛ばず、ただベッドの縁に叩きつけたようなだけに終わった。
だがその際に、"ガシャン"という、枕が打ち付けられた音とは明らかに違う音が聞こえ俺は顔をあげる。
「……?なんだぁ?」
ベッドに乗ったまま、枕が転がっている所を覗き込む。するとどうだろう。ベッドの下から四角い箱の角がひょっこり見えているではないか。
…これは心擽られる。そういえばこの部屋を探索したことなんてなかった事を思い出し、嬉々としてベッドの下へ手を伸ばした。
ベッドの上に箱を引き上げる。大きさ的にはシューズの箱より少し大きめか、重さは見た目よりはしっかりとある。
なんだろうなんだろう。
まるでプレゼントを貰った子供みたいな気持ちでワクワクしながら箱のフタをパッと開けた。
「…っ…なんだこりゃ…」
だがしかしその気分は一転。中身をみて絶句した。
濃いピンクやどぎついムラサキ、水色や、桃色、藤色、白、透明…
の、色をしたたくさんの大人の玩具が詰まっていたのだから。
「うっ…わぁ〜。グロぉ…。なにこれやべぇ」
目についたのは一際大きくて太い、濃いムラサキ色をしたバイブ。
手にとると余計太さが際立ってこちらが身震いしてしまう程だ。
「こんなん挿れるっつうのかよ?」
女だったら入るのか?男の俺には到底無理だろうけどと思いながらバイブを眺める。
そこでふと、過った。
(…如月の……)
前に如月にフェラをした時の事が。
目の前にある如月の性器を必死に舐め、奉仕をした。テクを仕込まれ可愛がられたあの日のこと。
その光景が、このバイブを眺めていると思い出されるのだ。
あの時の気持ち良さと先導してる優越感が。
ただ思い出されるだけ、だけ…。
「…き、…如月…の…」
バカみたいにゴクリ、と喉を鳴らした。
一体なにを考えているんだよ俺。正気に戻れ。
手にもつバイブを見つめ、喉を鳴すなんて
そんなの変態のする事だろ……?
気持ち良いことが好きなのは仕方がないけど、
お前はそこまで堕ちてないだろ?
だろ?………俺。