「…あっ…ふ…っ」

「…はあ…」

「…んんっあ!…先っぽはや…んあっ」

「、いいんでしょう?」

「ああっ…んくぁ…っも…だ、めっ!イくっ…」

「一緒にイきましょ…っ」

「ぁ…激し…っんっっ、ああ!」







「…ふあ…満足…」

「お疲れさまです…紫さん」

鹿がそっと俺の唇にキスをした。それに少しばかり俺も答える。

まだ余韻から覚醒していない脳でぼんやりとキスを繰り返していたが、くちゃりと響いた精液の音で我に返った。


「あ、ごめん…ゴムしてやったほうが良かったな?鹿、手汚れてもうてる」

「え?大丈夫ですよ。拭き取ればいいだけですし」

鹿の手にべっとりと付いた二人分の精液。

「舐めてもいいですし」

「それはやめ!」


口に近づけ始めた手を急いで止めた。こいつは本当にやりかねない。


あれから、
本格的に"お付きあい"を始めた。
まぁ、今までも付き合っていたといえば付き合っていたんだけれど そこに性行為と特別な感情が加わると今までの"お付きあい"が如何に状だけのものだった事かがはっきりとわかるもので。



「紫さんの精液なら僕余裕で舐められます」

「舐めんでええから!そないな事はせんでええ」


鹿とするエッチは気持ち良いし好きだ。
だけど、あの日(俺が酔って襲った日)以来、俺達は挿入も含めの最終的な所まではしていなかった。

理由はある。
毎日の様にある仕事に差し支えるって事。
攻める鹿は大丈夫だろうけれど受け入れる俺としては身体が辛くなるから仕事の前とかにはエッチはしたくない。

あと…。本音を言えば怖いっていうのもある。
初めての時はべろべろに酔っていたから、思い切りよく出来たんだと思う。
でもシラフで鹿を受け入れるとなると……。
どうも二の足を踏んでしまう。


そうゆうのもあって、今俺達は互いのを擦り合わせる、という行為で愛を深め合ってる状態だ。
でも不満はない。だって怖いし。
鹿もそれ以上を求めて来ないから、俺は今のままで満足していた。だから何も気にしていなかった。




そんなある日の仕事終わり。

今日は楽屋が大部屋だった。がやがやと騒がしい中で俺は帰り支度をしていた。

確か明日の仕事は朝9時からだった気がする…って事は6時半に家を出れば間に合うか、
なんて頭の中で予定を立ててつつ 支度をして、リュックのチャックを締めたとき 声が掛けられた。

振り向くと鹿。

ああ、一緒に帰りましょうとかだろうな。
と今までの経験上察した。
「ん、じゃあ帰…」

「今日は、先帰っててください」




「……え?」

予想外の事に耳を疑った。いつもニコニコしながら"一緒に帰りましょう"なんていうやつが。

「ちょっと今日…用事があるので先に失礼します」

「…あ…ああ、お疲 れ…」

鹿は今までのワンコさが嘘の様にそそくさと俺から離れていった。
……しかも何故か出入り口付近で同期後輩芸人達と合流して。


「………変や……」


なんか変。鹿は飲みに行くのでさえも俺が行かなきゃ行かない、そんな奴なのにこんなの絶対おかしい。

絶対なんかある。


俺は、まだ楽屋に残っている、しかもさっきの団体の近くにいた後輩に聞いてみた。


「なあ永井、あいつら何しに行くか知ってる?」

「あ、藤田先輩。さっきの人達ですか?うーん…」


無いのか?…やっぱり人前じゃそうゆう事を言わなかったのかもしれない。事前に決めていたのか、はたまたメールだけでの会話か…。それだと、もう調べる事は難しくなるだろう。…悔しいが。

そう、諦めかけた時。


「あ、そう言えば、今から合コンに行くとかなんとか言ってましたよ」

「……合、コン…?!…」

合コン、ってあの?
男女でやる、あれの事?
それに鹿が?

「……まじなん…?」

「はい。さっき皆さんで盛り上がってましたし。"お持ち帰りするぞー!"って」

お持ち帰り?!
それに、鹿も参加を…?!

俺は何だか言い知れぬ気持ちになった。
何かがぐるぐる渦巻いて気持ち悪い。


…鹿が女の子に会いに?
信じられない。嘘だろう?
だって、俺の事好きって。他には何にもいらないって何度も何度も言ってくれたのに。



…………嘘だった?


「……そないなこと…無い…」

無い無い。でもそう思える根拠も無い。
現に鹿は俺に用事があると言って他の奴らと合流して出ていった。

それを見てしまった俺は、心から鹿を信じられない。全然見えなくなってしまった。


「藤田先輩?どうかなされて?」

「あ…いや大丈夫…そか、ありがとうな。じゃあお疲れ様」

「お疲れ様ですー」





今日の空は、俺の心とは裏腹に綺麗に澄んだ星空だった。