高崎の言っている意味がよくわからなかった。
…俺的にはまたいちゃもんでもつけて服装が乱れてるだのなんだので犯されるのではないかと思っていたからだ。

だが…高崎はなんと言った?『次の期末試験で、学年順位10位以内に入ってほしいんだ』……え?期末…試験?



「……は…?」

もうだめだ。ちんぷんかんぷん。期末試験ってあの期の末にやる試験だよな?
で、順位ってその試験の成績のいいやつランキングだろ?…ん?…んん?

「意味わからないって顔してるね。こんなに分かりやすく言ってるのに」

「バカにすんな…!俺が聞きたいのはなんで突然「じゃあバカな君の為に分かりやすくもう一度。
一週間後にある期末試験で、学年順位10位以内に入ってもらう。もちろん、今のまま学年最下位の君の実力でってわけじゃないよ。この一週間でみっちり勉強してもらって、だけど」


言葉を遮り、ニコ、と微笑んだ。
いや、ニコ、じゃねぇ。爽やかに笑ってんじゃねぇよ。みっちり勉強?ふざけんな。なんの権利があってお前にそんなこと命令されにゃならんのだ。


「意味わかんねぇから!つぅかそもそも生徒会長のてめぇに俺の成績なんて関係ねぇだろ」

…そうだ。俺は所謂学年成績で最下位ってやつで。一年の頃からずっと最下位だった。でもだからって抜け出したいとか嫌だとか思った事はなく、最下位は必ず誰かがなるんだからと、能天気に考えていた…くらいなのに。

「あーはいはい。でも君に拒否権なんてないよ。僕がやれと言ったらやらなくちゃいけないの。…君には借りがあるの忘れたの?」

「……は?…」

借り?借りってあの8000円の事か?でも、

「あれはこの前ちゃらになった……」

「ちゃら?何を言うの君は。もしこの前の屋上の事を言っているなら間違いだね。だってあれは君一人で気持ち良くなっただけ。僕は何にも気持ち良くしてもらってないよ?」

「……んな…っ…」

……言われてみれば…そう…だったかもしれないけど…!あれは勝手に高崎が手伝うだの言い出したんじゃないか。それに無理矢理キスもしてきて。それなのに、それなのにそんな事を言うのかこいつは…!

…俺は今にも膝から崩れ落ちそうな程ショックを受けていた。でも高崎は知ったこっちゃないとゆう顔で。

「だから君はまだ僕の言うことを聞かなきゃならないんだよ。」

わかった?水瀬…、と高崎が耳元で低く囁く。不意のことにぞくぞくっと身体が震えた。

「……っ」

納得いかない、と睨みを効かせるも高崎は平然とそれをいなす。……高崎の俺様スキル発動か、俺の言うことには絶対折れないし動じないってオーラが出ている。暫く睨んでからそれに折れたのは俺の方だ。




……じゃあ、さ…。

じゃあ仮に、百歩譲って高崎の言うことを聞く、としてだ。…

「…学年順位10位内なんて、無理に決まってんだろ。今から勉強したって間に合うはずない。俺の頭の悪さ知ってんだろ。」

たった一週間で何が出来る。全くのバカが一週間頑張ったところで普段から勉強してる奴等に敵うわけないだろ。
…それがわからない高崎じゃないだろうに。

「…なめてるの?誰が君に勉強を教えると思ってる?
この僕が、直々に君に勉強を教えてあげるんだよ。無理なんて事は絶対ない」


自信満々に、高崎は言い放った。まるで、未来がわかっているかのように。
力強い高崎の姿に少し、どきっとした。



「……無理に決まってる」

でもこればっかは高崎でも無理だって。俺は学年最下位ですっげえバカなんだから。
視線を足元に落として溜め息を吐けば、高崎が俺の両肩をぱんっと叩く。

「痛っ」

「大丈夫。水瀬にやる気があれば。さぁ説明はこれくらいにして早速勉強を始めようか」

「え…今から?」

「もちろん。時間ないからね。あ、それと明日からは朝から生徒会室に来てね。授業に出なくても生徒会室に来てれば出席した事になるようにしたから」

「…え?…え?は?」

「わかったね?じゃあ始めようか」

「…え…ちょ、」

なにそれ、それって生徒会長の権限の域を越えてね?
出欠席まで操れるなんて最早先生の域じゃん…
唖然とする俺に教科書を押し付けながら、高崎は柔らかく微笑んだ。




◇◇◇◇◇






ここの高校は単位制の選択授業式だから、必履修科目と単位さえ気にしていれば自由に授業を組む事が出来る。
幸い、数学は一年の頃に履修していた為、今回勉強せずにすんだんだが…。


「君、be動詞もわからないの?」

「わっかんねぇから"英語基礎"履修したんだっつぅの!」

「にしても酷いよ。よく高校まで来れたね」


隣で英語を教えていた高崎が真顔で罵り、バカにするから、腹の底からむかついて俺は机をばんっと叩く。


「っんなんやってられっか!そもそも勉強なんて性に合わねえんだよ!」

やっぱり俺には無理だったんだと
ぎゃんぎゃん怒鳴って、俺は席を立ちあがり、帰ろうとする。
…しかし一歩、踏み出す前に高崎に腕を捕まれ引かれ、座っている高崎の膝上に不時着してしまった。

「なにすん…っ」

「じゃあ君の性に合ったお勉強方法にしようか。折角マンツーマンなんだし」


「は…?…っひ?!」


背面のような態勢を利用して、高崎は素早く俺の制服の裾から手を差し入れ 目的の胸の突起…乳首を弄りだす。

「…っやめろよ!触ん…な」

無遠慮に胸をまさぐってくる高崎の腕を掴み、離そうとするが そうするとぐりぐりと乳首をつねられて抵抗の手が止まる。

「…ぁ…、くそ…っ」

「そうやって強がる君も可愛いね」

「…眼ぇ腐ってんな…、…」

バカにする高崎にせめて声だけは出してたまるかと ぐっと唇を噛み締めるが、どうしても吐息のような声は漏れてしまう。

「…ふ…、ん…」

「そっちの方が余計やらしいよ」


俺の項に噛み付いたり舐めたりしながら高崎は笑った。…とゆうのは見えないが、吐息が俺の首筋に触れたからわかった。


「…ほんとにやめろ…って…勉強すんじゃ、なかったのか…よっ」

「今してるけど。お勉強」

…何が"お勉強"だよ。どうみたって襲ってるようにしかみえねぇし!

胸をまさぐる高崎の手を必死に外そうと努力する。が、許さないとばかりに乳首をぎゅっとつねられると思うように抵抗も出来ない。

……なんなんだよ。
真面目に勉強を教えるのかと思えば襲ってくるし…。
もしかして……こうしたいが為に勉強しろとか言ったんじゃねぇのこいつ…!


ぎゅうぅっとつねられながら、俺はそれに耐えつつ声を発した。


「っ勉強なんか…教える気ねぇんだろ…っ!」

初めからこうゆうのが目的なんだろ?!
…そう声を荒げれば高崎は小さく笑って。


「だからこれは君に合った勉強方だって。僕はちゃんと勉強を教えるよ?君には成績上位に入ってもらいたいし。…まぁ、それが達成出来なかった時の罰も僕的には面白いからいいんだけど」

「……え…?」

そこで、さっきは聞いてない言葉を聞いた。
罰…だと?なんだそれ。さっきは言ってなかったじゃん!

「あれ?言ってなかったかな?もし成績10位内に入れなかったら生徒集会の時に全生徒の前で犯すって」

「……は……ぁ…?!!!」


…言ってなかったも何も聞いてない。初耳だ初耳!そんなの聞いてない!
学年10位以内なんて望みが限りなく薄いのにそんな罰有りだなんて明らかに罰目当てだろ!


「ふざけんなっ!そんなんがあるなんて聞いてねぇ…っ!だったらお前の言うことなんか聞かねぇぞ…」

…そうとわかったら勉強なんてしてられっか。冗談じゃない。罰を受けるとわかっていながら勉強をするなんて無駄だ。
俺は抵抗を続けながら怒鳴った。すると高崎の声のトーンが少し低くなって。

「だから君に拒否権なんてないって言ってるの。…わからないのかなぁ?」


…さっきまでの声と違うからゾクッとした。嫌な予感がしたがその予想は悲しくも的中する。

高崎の膝上に背面で座るようにしていた俺は後ろから背中を強く押されて目の前の机に倒れ込んだ。

「…いってぇなっ!」

手を付き、なんとか顔面強打は回避出来たがすぐに上から高崎に押さえ付けられ、机に突っ伏すような情けない格好をさせられる。

「…高崎っ!やめ…」

「やめない。僕は意地でも君に勉強させるよ。…この方法でね」

高崎が俺を見下ろす。
俺はまるで蛇に睨まれた蛙の如く、動けずにいた。