可愛いは正義。もふもふは可愛い。
 すなわち、もふもふは正義。

夕焼け映える、帰り道。通学路である河川敷。ゆるやかではあっても幅のある流れを見下ろしながら、俺は自転車をひいて歩く。
 季節は秋も終わるというもの。枯れたススキやらなんやら、背の高い草が土手を覆い、かさかさと揺れている。その隙間に、もふりとしたものを見つけた。枯草に埋もれた、崩れかけた段ボール。水際にある段ボールから、白い、ぼさぼさした仔猫が這い出そうとしている。仔猫は段ボールの縁に両手を掛け、そのまま段ボールを乗り越えようとしているらしい。ふるふるした動きをはらはらしながら見守っていると、不意に、段ボールが傾いだ。仔猫を巻き込んで段ボール転がり、水の流れに濡れる。俺は自転車を放り出し、滑るように、土手をかけおりた。
 流されていく段ボールは、次第に滲む水の重みで、ゆっくりと沈んでゆく。迷うことなく、俺は川に飛びこんだ。
 そこで俺は思い出す。
 俺は水が苦手だ。もちろん、泳げない。
 溺れるかもしれないということに思い当たり、闇雲に手足をばたつかせる。膝に石があたって痛い。もしかしてここは、浅い?
 ふと岸を見遣ると、水飛沫の向こう側に、土手を駆け上がる仔猫のしっぽが見えた。

(たすけるって、むずかしい)

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仔猫ちゃんと俺-
Oxygen shortage/酸欠
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作者/さきは

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