そこには白が広がっていた。
それは、目を眇めるような鮮烈な白ではなく、塗り潰すような平坦な白でもなく、粉砂糖が漂って視界を覆っているような、ぼんやりとした白だった。
 電飾や蛍光灯の光などないにもかかわらず、その白は、肌を刺すように明るい。
 もしかして雪あかりだろうか。
 そんなことに思い至った途端、白の地平の上に藍が現れた。砕けた破璃めいた大気に肺が引っ掻き回され、滲み湧く燐光に肌が灼かれる。
 不意に、眩暈を覚えた。白と藍が歪んで交じり合い、ぐらつく身体を支えきれずに、私は雪原に倒れこむ。雪に沈む私の耳もとを、さらさらと音を立てながら、粉雪が転がり落ちていった。
 くすぐるように、抉るように、粉雪のはしゃぎ声だけが、私の鼓膜を満たしてゆく。
 凍てついた耳が、陶器と化した頬が、樹氷となった四肢が、静寂に鎖された時。
 鈴の音が、鳴った。


(おはよう!)
(……)
(あまりにも起きないから騒ぎまくったけど、不機嫌になられる筋合いはない)
(……)
(何?)
(いや、そういえばもうすぐクリスマスだな、って)
(……)
(何?)
(起こしてやったんだ、プレゼントよこせ)
(!?)

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あなろぐめざまし-
Oxygen shortage/酸欠
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作者/さきは

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