僕は哀しくない、君は哀しい。
 僕は辛くない、君は辛い。
 だから。

「やめちゃえばいいのに」

 と、怒ってくれる君に、

「そうだね」

 と、薄く笑いながら頷いた。
 掠め取られるだけで報われることもなく、卑下されるだけで掬われることはない。弱々しく取り繕うことがやっとで、それすら効を奏さずに破綻する。痛めつけられて踏み躙られるだけのものに固執してどうするのだろう。
 確かに、我ながら、意味が解らない。

「やめちゃえばいいのに」
「うん」

 僕は素直に頷くけれど、それがかたちだけであることが君には判るらしかった。君の目が不機嫌そうに細くなる。

「馬鹿なの?」
「そうだね」

 微笑む僕に、君は奥歯を軋ませながら眼を逸らした。
 僕は悔しい、君は悔しくない。
 僕には素晴らしい、君には下らない。
 それゆえに。
 僕は苦しくて、君も苦しい。


(手放せないから、足掻くしかないんだ)


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いきをする-
Oxygen shortage/酸欠
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作者/さきは

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