Let's Do It !!
俺はここ数日、部屋に籠りっぱなしだ。
その原因は、俺の愛しい恋人である、ルフレにある。
そう。ルフレは俺を試してるんだろうかと思う事がある。
並んで座れば、何故か俺の太股の上に手を乗せ、指でくるくると円を描く。
恋人らしくハグをすれば、首筋にちゅっと音を立ててキスをする。
「揉んだら大きくなるらしいんだけどなー」と自分で胸を揉みながら上目遣いで俺を見る。
その他諸々を二人きりの時にされれば、さすがの俺も意識してしまう。
俺だって男だ。
好きな女に触れたいと思うのは当然だろう。
だが俺の可愛い恋人は、キスをしただけで真っ赤になって息が上がるのだ。
それ以上触れたりして、嫌われたら困る。
嫌われるならまだいい。
心臓発作でも起こして死んでしまうのではないか。
それを大袈裟だと思えないほどルフレの照れ具合は凄まじいのだ。
しかし、正直俺の方も限界が近い。
こんなことが続かれると、何かが切れてしまう。
そんなことになったら、
「誘うお前が悪いんだ」とか言って、泣こうが喚こうが嫌われようが押し倒して、我慢していた分を取り戻すように堪能するに決まっている。
それで嫌われても、猿轡をして監禁してでも、ずっと離さないだろう。
俺は思った以上に自分を分かってるな。
何となく自分で感心して、ため息をつく。
現実問題、実際に監禁などするわけにはいかない。
それは本当の最終手段だ。
かと言って、こんな悶々とした状態でルフレに会うのも辛い。
だからこうして部屋に籠りっぱなしな訳なんだが…。
「ああ、もうこんな時間か」
少し気分を変えようと、ベッドから起き上がり、窓を開けて空気を入れ換える。
外には星空が広がっていた。
まだ少し冷たい風が肌に心地いい。
何となくそのまま星を眺めていたら、コンコンとドアが鳴った。
フレデリクだろうか。
最近部屋から出ない俺のために夜食を持ってきたり、近況報告などをしてくれる。
「入っていいぞ」
空から目を離さずそう言うと、ドアが開く音はするものの、近付いてくる気配はない。
何か遠慮する事があるのかと振り返る。
「どうした、フレデリ…」
「……………………やぁ、クロム」
そこにいたのはドアの隙間から顔を覗かせたルフレだった。
「…………」
もう絶句だ。
何をしてるんだ、こいつは。
心なしか気まずそうな表情をしている。
一応、こんな時間にここに来る事への戸惑いはあるってことか。
「クロム、元気?」
「ああ」
はい、元気です。
今日も元気に煩悩一杯だ、ばか。
そんな事を悟られまいと、無表情に答えると、ルフレはおずおずと尋ねてきた。
「入っても……いい?」
いい訳あるか!
「夜中に男の部屋に来るってのは、それなりの覚悟が必要だと思うが…?」
少し意地悪だろうか。
ルフレは少し俯く。
「うん。覚悟……してきた」
「……………」
本気かこいつ。
困ったように笑いながらルフレは言葉を続ける。
「ごめんねクロム。本当は我慢させてた事分かってた。だけど気付かないフリして、僕だけ好き勝手してさ」
「……いいのか?」
ごくりと喉を鳴らし、自分でも驚くほどの掠れ声で尋ねる。
ルフレから返って来た言葉は俺を天国に昇らせるものだった。
「うん。朝までずっと一緒にいさせて?」
「ルフレ…っ!」
ドアを押し開け、ルフレの小さな身体を部屋に引き入れた。
唇にキスを落とそうと更に引き寄せる。
ん?
何か固い物に唇が当たった。
ぱちりと目を開けると、目の前には謎の箱が押し当てられている。
「何だ?」
「ど、どーしたんだよ、クロム。急に……」
箱をどかしてルフレを見ると、真っ赤な顔をしている。
どうしたはこっちのセリフだ。
そのカラフルな箱をよく見ると、大きく『人生ゲーム』と書かれている。
「前、クロムと買い物に行った時、この人生ゲーム、欲しがってたけど僕がダメだって言っただろ?」
ああ、確かにそんな事もあったな。
「帰りもずっと欲しかったなってちょっと拗ねて…」
ああ、確かに拗ねた。
「そしたら、ショックで部屋に籠るようになっちゃって……。そんなに欲しかっただなんて僕、知らなくて……」
待て。
何だそれ。
俺がそのおもちゃを欲しいが故に拗ねて部屋に籠ったと思ってるのかこいつは。
「我慢させてごめんね。僕買ってきたからさ」
にっこりと天使の微笑みを浮かべて。
「君が満足するまで、朝まで眠らない覚悟で来たからさ。一緒にしよ?」
可愛い俺の恋人の一言で、俺は背中からベッドに倒れ込んだ。
「そんなに喜ばなくていいのに。もうクロムは大袈裟なんだから」
そう笑うルフレの声はやはり可愛くて愛しいので、まだまだ我慢しなければと心に誓った。
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ボードゲームの方の人生ゲームが欲しいです。っていお話。
友人をたくさん招いてゲームしたりするんですが、ボードゲームも悪くないなー。
人労