「君には常に自由であって欲しいと願うよ」



そう言ってくれる優しいルフレと対照に、俺はルフレの自由を全て奪ってしまいたい。















自由

















俺は、王族の人間とは思えない程自由に生きてきた。
自由なんて言えば聞こえはいいが、ワガママに育ったといえばそれまでだ。
欲しいものは全て手に入ったし、やりたい事は全てやってきた。
自警団もその一つだ。


だからこそ、家族や友人達にも自由であってほしいと思っていた。
その為、自警団はみんな個性的だし、それは俺にとって喜ばしい事でもある。



なのに、ルフレだけ。
ルフレだけは、どうしても束縛してしまう。

それをルフレが望まない事だと分かっているのに、だ。


アイツは俺以上に自由だ。
目を離せば何処かへいなくなってしまうのではないかと、不安になってしまうほど。

















「ルフレ」



ソールと楽しそうに話すルフレに声をかけた。
ルフレが別の男に微笑みかけている事に、話をしている事に、見つめている事にさえ苛立つ俺は本当に狭量だ。








ルフレの名前を呼ぶと、ソールとの話を止め、こちらに視線を向ける。
そうだ。それでいい。
お前は俺を、俺だけを見ていればいい。




「どうしたの、クロム?」
「今度の作戦を確認したい。少し時間をもらえないか?」
「うん、構わないよ」





ソールに手を振り、またねと挨拶をするルフレを、場内の俺の部屋へ招き入れた。























「それで?確認したい事って…なっ…!」


扉を閉めてすぐにルフレの唇を塞ぐ。
勿論キスで。




「び……っくりしたぁ…」





突然の事に驚いた表情のルフレの頬に首筋にとキスを落としていく。



「ん…っ。どうしたの…?」






嫌がりはしないものの、腑に落ちないといった表情なのが気に入らない。
ソールとあれだけ楽しそうに話していたくせに…。







「ねぇクロム。どうしたのって、ば!」





肩を力一杯押されて制止される。





「嫌だっていうのか」
「嫌とかじゃなくて…。どうしたの、突然。作戦の話は?」
「そんなもん、嘘に決まってる」
「嘘?何の為にさ」
「……何の為に?」






ソールから引き離す為。
お前を部屋に連れ込む為。
キスをする為。
俺を見てもらう為。







「くそっ…!」







そんな事言える筈がない。
仲間と話している姿を見て妬きましたなんて。



大事な仲間だ。
ソールも、ルフレも。



そんな感情を抱いていい訳がない。


分かっていても、止まらない。
情けない、悔しい、辛い。



それでも、俺だけの物であって欲しい。



















「クロム」



ふわりと、髪を撫でられる感触に目を細める。






「僕をどうしたい?いいよ、好きにして。君は自由だ。自由であってほしい」
「ああ…」
「僕の感情なんて無視してよ。君がしたいことをして」
「俺は…」
「君が僕を閉じ込めたいならそれでもいい。殺されてもいいし、この軍から出ていってもいい」




真っ直ぐに俺を見つめる瞳から目を逸らす。



















「すまない…」























今思えば、それが合図だったのかもしれない。











▽▽▽
"鳥籠"前のイメージで。
何年も前の体験談でもあります。



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