ルフレは自分が女であるという自覚が足りない。
本人は別に構わないと言うのかもしれないが、ルフレに消えない傷なんか出来たらこっちが発狂してしまう。
やはり、嫁入り前の女性が怪我をする姿は男として放って置けない。
だから最近考える。
例えば、初めからルフレが女性としてこの自警団に入っていたのなら。
example
俺とルフレ以外に、ルフレが女だと知っている奴はいない。
だけど、最近考える。
ルフレが女性だと皆が知っていたら?
もう少し戦闘では後方を任されているだろうか。
もう少し淑やかになっているだろうか。
もう少し秘密等無く、伸び伸びとしていただろうか。
それとも、うちの男共に色恋沙汰という意味でもっと人気が出ていたかもしれない。
皆がルフレを男だと思っている筈の今でさえ、アイツはやけにうちの男共と仲が良い。
女だと分かれば恋に落ちる男だっているだろう。
下手すると、もう既にルフレには好きな奴がいるかもしれない。
いなかったとしても。
例えばこれからルフレに好きな男が出来て、恋人になって、結婚したら。
そこまで考えて、俺は妙にもやもやした何かを感じた。
想像の範囲を出ていない。…というより、まだ俺の妄想でしかないルフレの恋人に、俺は今、間違いなく苛立っている。
何となくルフレを取られるような、そんな気がしたからだ。
何だろうか、この感情は。
正体不明の不快感さえ感じるこの感情の答えを知りたくて、俺は頭を捻る。
焦りのような、歯痒さのような、苦しいような、それでいて、ルフレには幸せになって欲しいという少しの祝福のような……。
あぁ。
分かった。
これはあれだ。
娘に恋人が出来た時の父親の心境だ。
俺は一体いつからルフレの保護者になったのだろうか。
自分自身に苦笑する。
きっとその内ルフレに「鬱陶しいよ、クロム」なんて言われる日も遠くないだろう。
それでもまだ、今だけは俺だけのルフレでいて欲しい。
何となくルフレに会いたくなって、自分のテントを出た。
少し風が冷たくなってはいるが、それが肌に気持ち良い。
外に出て気付いたが、会いたいとは言っても、もう夜中だ。
さすがにルフレのテントに行って叩き起こす訳にもいかないので、取り敢えず星空を見上げた。
風に木々が揺れる音と、虫の鳴き声。
こういうのを風情があるというんだろう。
目を閉じて大きく息を吸い込むと何か別の物音が聞こえた。
人の足音だ。
こちらへ近付いてくる。
こんな時間に一体誰だ?
念の為少しだけ警戒して近付いて来る足音の方に目を向けると、暗闇の中に人影が見える。
何者かと目を細めてみてみると、その人影もこちらに気付いたらしく、歩みを早めて、その内走り出した。
数秒後、その人影が満面の笑みでこちらへ走ってくるルフレだと気付く。
例えばお前も今、同じ気持ちでいてくれたならば。
▽▽▽
こういう意味での「例えば」はexampleじゃないですよね、多分。
他に思い付かなかったのでこれで。
いいの知ってる方がいたら教えて下さい。
クロムも無自覚です。これくらいがちょうどいいですな。
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