僕は記憶喪失で倒れていて、そこをクロムに拾ってもらって。
自分で自分を男だと思っていたら、お風呂に入ろうとした時に、自分が女だと気付いた。



我ながらまぬけな話だとは思う。
それを知っているのはクロムと僕だけ。僕は皆に自分が女だと言わない事に決めた。





でも、最近よく考える。
僕が本当に男だったらどうなっていたんだろう、って。








if













僕がもし本当に男だったら、きっと今よりもっと大雑把な生活だっただろう。


今は着替える時も皆に見られないように隠れて着替えなきゃいけないけど、男だったらそんな事気にしないで、そこらで脱いだりして。
それをリズやマリアベルに怒られたりするんだ。


もっと皆と男の友情を築いて、筋肉自慢や、好みの女の子の話をしたりして。

力も今よりあるだろうから、クロムにも剣術で勝てるかもしれない。



それに、可愛い女の子と恋をして、その内結婚して、子どもが出来たりして。



きっと、クロムにも恋人が出来るだろう。
クロムは女の僕に恋愛相談なんか出来るようなタイプじゃないけど、男の僕になら少しはしてくれるんじゃないかと思う。

誰を好きになったとか、デートにどうやって誘おうとか、告白はどのタイミングでだとか。


彼の事だから、きっと想いが実って、幸せそうに恋人と笑い合っている筈だ。



そこまで考えて、何だかよく分からないけど苦しくなった。
クロムはきっと、恋人が出来たって、子どもが出来たって、僕の事を友人として、いつまでも仲良くしてくれる筈だ。

勿論僕に恋人が出来たって、クロムは一生大事な友人だ。


だけど、何だかクロムに恋人が出来る事を考えると、何て言うのかな。
クロムを取られる様な気分になる。


他の人も、親友に恋人が出来るとこんな風に思うのだろうか。
思わないかな。皆はきっと、心の底から祝福してあげるだろう。




となると、






「僕はまだまだ子どもって事か…」



これは父親を他の兄弟に取られるような感覚に近いのではないか。
兄弟とはいえ、大好きな父親は渡したくないという幼い独占欲。


思わず自分に苦笑して、もう一度考える。


もし僕が本当に男だったら。







もっとクロムの力になれるかもしれない。
もっとクロムに近付けるかもしれない。
もっとクロムが信頼してくれるかもしれない。





こんな風に女々しく、幼い独占欲なんて抱かなかったかもしれない。




女である事が嫌だとは思わないけど、何となく、今の僕はまだクロムには遠い気がする。
遠慮されてるというか、遠慮しているというか…。







「あーぁ。クロムに会いたいなー…」




無意識に口から出た言葉に驚いたけれど、それを実行しようと立ち上がり、自分のテントを出た。







今は僕だけのクロムを堪能しに。










▽▽▽
男になれたら良いなぁ、と思う事って沢山ありますよねー。っていう話。
好きな人とは恋愛するより、友情育みたいルフレ君という事で。

一応、無自覚です。当分無自覚で良いです。





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