2011.0606
(2929hit、飛泥)




「角都に部屋ァ追い出された」
「あー、そう」


飛段がオイラの部屋に来た。
ちょうどその時、オイラは新作アートの形成に勤しんでたからこのタイミングで来られると迷惑っちゃ迷惑なんだけど、構ってやらないと煩いから(ガキみたいだよな)、仕方なく作業の手をとめてやった。

どうやら飛段は角都の邪魔をして部屋を追い出されたみたいだ。
帳簿やら金勘定やらをしてる時の角都は些細な事にも敏感で、神経質になってるからおっかねー。
こうなると、もう部屋を追い出された飛段には慰めの言葉をかけるしかないよな。

…と思ったけど、案外こいつは気にしてないみたいだ。
呑気に欠伸しながら外套脱いで、完璧に角都の仕事が終わるまで此処に居座る気でいるらしい。

でもその後部屋を見回して、言ったその台詞にオイラはちょっと驚いた。


「あ、もしかしてデイダラちゃん爆弾作り中だったァ?」
「アートって言え、アート。一応な、うん」
「じゃあ俺お邪魔?帰る?」


飛段の癖に今日は珍しく空気読んでる。
帰ってくれるならそれはそれで嬉しい様な気はするけど。
でも頻りにオイラの作品棚(アートのレプリカ置き場みたいなもんだ)を見てるところからして、暇を持て余してるのは明らかだ。


「いや、別にいいって」
「そーか?」
「ああ。どうせ帰ったってまた追い返されるだろーしな、うん」


歳が近いからかは知らないけど、オイラは飛段に親近感を覚えてる。
だから来てくれたなら追い返す気にはならないし、いてくれた方が楽しくて、いい。

オイラが追い返さなかったのが珍しいのか、一瞬飛段は目を丸くさせて驚いてたけど、
その顔はすぐ年相応に見えない笑顔に変わった。


「ありがとー、デイダラちゃん!」
「どうだ、優しい先輩だろ?」
「ゲハハ、初めてそう思ったァ」
「なんだそりゃ、うん」


談笑するのもいいけど、なんだか手持ち無沙汰な気がして、オイラの手は自然と粘土を掌で捏ねくり回す。
それに感化されたのかは知らないけど、飛段もそこらへんに散らばってた粘土の残骸を集めて一つの塊にしてた。

いい歳した男二人が粘土遊びをする(っていってもオイラはまだ若いし、オイラのは粘土遊びじゃなくてアート鑑賞なんだけどな!)ってのもなかなか面白いもんで、
普段は一人で黙々としてたい作業も、二人でするのも楽しく思えた。


「デイダラちゃん、なんか作ってみてくれよー」
「別にいいけど…。そうだ、オイラ作ってやるからよ、お前もなんか作れよ、うん」
「ええ、なんでェ?!」
「お前の芸術センスを見てやるよ」


飛段はあんまり乗り気じゃないみたいだけど、暇だし断る理由もないんだろうな。
初々しい手つきで粘土をいじくり回し始めた。

そんな様子をジロジロと見てたら、それに気づいた飛段は、サッと作りかけの作品を隠して「見るなー!」って柄にもなく恥ずかしそうな顔して言った。
…お前、普段あんな格好してる癖に、こういう事には羞恥を感じるんだな。

オイラは作ろうと思えばすぐにでもできちまうから、どちらにせよ見てる羽目になるんだぜ。
と意地悪く言ってやると、飛段は悔しそうに、これだからゲージュツカは…。
なんてよく分からない事を言いながらまた作業を開始した。



飛段は飛段なりに頑張って作っているみたいで、明らかに不器用そうな指先をなんとか駆使して、オイラの想像してたのよりずっといい作品が完成されつつあった。

そういう姿を見てると、オイラの芸術家魂を刺激されるってもんだ。
さっきまであんまり進まなかった新作アートの形成も、不思議とできる。
どうやらいい方に感化されたみたいだな。





「うーん、まあこんなモンだろォ!」
「オイラもできたぜ、うん」


数十分後。
さっきまで難航してた作業が嘘みたいに終わった。
そうして、殆ど同時に作業を終えたオイラ達は、完成した作品を自分の前に置いた。


オイラは、隼をモチーフにした戦闘用起爆粘土のミニチュア(最終的には速さと爆発の威力をより高めた作品になるつもりだ)。

飛段は、埴輪みたいな輪郭をした置物。


それは素人にしちゃよくできてて、オイラは飛段の顔をまじまじと見つめちまった。
だってこいつがこんな作品…。
ましてやこの地道な作業を耐え抜いて、こういう作品を作れるだなんて思ってなかったからな。


「なんだかんだいってもよ。やっぱりデイダラちゃんはうまいよなー」
「いや…お前もなかなか…」
「まった、オセジ言っちゃってよォ!」


お世辞じゃないんだけどな…。
って言ってやろうとしたら、飛段は部屋にかけてある時計を見て、どっこらせと立ち上がった。


「帰るのかい、うん?」
「あー。もういい加減角都も暇になってんだろ」


それに、ジジイは寂しがり屋だしィ。と言った飛段に嫌な寒気を覚えたけど、
それについてはあまり考えないようにして、オイラは今しがた完成させたレプリカを作品棚に移して、飛段を見送る事にした。



「あ、そういえば」


飛段が部屋から出て行く直前、オイラは飛段が作った作品を部屋に忘れてる事に気づいた。


「お前の作ったやつ…」
「あーアレ?デイダラちゃんにやるー」
「はあ?」
「いやだって。俺が持ってたら多分すぐ壊しちまうからさァ…。な、頼むよ貰ってくれよ」
「お前な…。…まあいいか」


大事にとっといてくれなァ!
と満面の笑みで手を振る飛段に、軽く手を振り返してから、オイラは部屋に戻って飛段の作った作品を拾いあげた。
その初々しさと、想像を超えるできにオイラは、あいつもなかなか芸術センスあるんじゃねえか?
なんて考えながら、慎重にそれを作品棚に置いた。


壊す事のないように。大切に。



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