2011.0423
(2000hit文、蠍泥)



道中でのこと。
任務を終えたデイダラとサソリは野を越え山を越え帰路についていた。二人は相当な距離を徒歩で進む。はっきり言って二人…ではなくデイダラは酷く疲れていた。それもそのはずで、いつもならばデイダラの鳥を象った起爆粘土に乗りひとっ飛びなのだが、任務中にあった戦闘でデイダラは起爆粘土を使いきってしまい徒歩を余儀なくされていたのであった。サソリと違い彼は疲れを感じる身体だ。任務で疲れた身体は重く、歩くスピードも落ち始める。
それとは逆に涼しい顔(疲れを感じない身体だから当たり前なのだが)のサソリは重いヒルコの身体を引きずりながらどんどん進んで行く。ヒルコとデイダラというこの体格差であるにも関わらず、いよいよ始めは先を歩いていたデイダラをサソリが抜かす。それを合図にしたかの如く「ハァー」とデイダラが溜息をついた。


「オイ、なにやってんだ」

溜息をつくだけでなく、道に生えていた木の枝の上に飛び乗り座り込んでしまったデイダラを見、ヒルコに入ったサソリの低い声が暫くぶりにデイダラの耳に入った。その声を聞いたデイダラは枝の上からサソリを見下ろし顔をしかめた。


「そろそろ休憩しないか、うん?」
「馬鹿言うな。んな事したら日が暮れんだろうが」
「オイラは疲れたんだよ」
「自業自得だ。だいたいこんな距離歩いただけで疲れたなんて軟弱な奴だぜ」
「旦那は生身じゃないからそんな事言えるんだ、うん…」

言い合っても一向にデイダラは立ち上がろうとはしない。素直に休憩をすれば良い話だが、疲れていない自らの身体それに加えて待つ事を嫌う精神を持つサソリにとってここでの休憩は全くの無意味だ。ならばデイダラを休憩させ自分はさっさと帰ってしまおうか…と考えたがすぐにサソリはヒルコの中で首を横に振った。以前、そうして別行動をとり先にアジトへ報告しに戻ったサソリを見たペインが、デイダラと一緒でない事に動揺し面倒な事になったのだ。同じ間違いを二度するわけにはいかない。
サソリはヒルコの中で外套から地図を出し確認した。見るとここからあと少し進めばアジトのある川隠れだ。川隠れに入ってしまえばアジトはもう目の前。ここで少し休憩したくらいで今日中にアジトにつけない、なんて事はなさそうだ。


「どうした旦那、急に考え込んで…。で、結局休憩させてくれるのかい?うん?」
「チッ、仕方ねぇ…。ハァ、生身の奴ってのは本当に面倒くせぇ」
「傀儡の身体に基準合わせんの止めろよな、うん。あ、そうだ」
「なんだ?」
「ヒルコの上にオイラが乗って進めば一石二鳥じゃないか?」
「…俺が了承するとでも?」
「思わねぇよ。冗談だって、うん」

このまま好き勝手言うと折角の休憩を無かった事にされそうだと察したデイダラは口を閉ざし、木にもたれ掛かってぼんやりとサソリのいる下を見つめた。ヒルコの背中がガチャリと開き、中から見慣れた赤髪が現れる。いつもながら眠そうな目を携え仏頂面をしたサソリは一瞬こちらの方を確認した。目が合った、気がした。
そのせいなのか何なのか、必要以上にさっと顔を逸らした(気がする)サソリは、デイダラに背を向ける様に地面に胡座をかきヒルコと向き合い、お馴染みのメンテナンスを始めたらしい。これを始めると、迂闊に話し掛ける事は出来ない。その他の邪魔と判断される行動も、だ。なんだかんだ言ってサソリにも休憩時間は必要なのではないかとデイダラは考えた。


ふと空を見た。木々の隙間から赤い光りが差し込んでいる。サソリの言うようにそろそろ日が暮れるらしい。きっとこの光りは夕日なのだろう。今は枝が邪魔をして見えないが起爆粘土が残っていればきっと綺麗な夕日が拝めたのかもしれないと少しデイダラは自分の準備不足を怨んだ。視線を下げて、再びサソリの後ろ姿を見つめる。サソリの赤髪に夕日の赤い光りが合わさり、何とも言えない赤色の美しさが醸し出されていた。デイダラより少し小さな背中を見ていると不思議と口元に笑みが浮かぶ。こんな顔、彼に見られたら何を言われるかわからないなと慌てて表情を元に戻し、デイダラは足の疲れがじんわりとひいて行くのを感じていた。



***

少し後のこと。
一通りのメンテナンスが終了し、サソリはいい加減出発するべくデイダラに声をかけようとした。もう十分休憩はした。メンテナンスに没頭し過ぎて少し時間を取りすぎてしまったという事は秘密だ。ゆっくりと振り返りって「おいデイダラ」と声をかけようとしてそのセリフは「おいデイ…」て止まった。


「デイダラ、テメェ…」

溜息混じりに呆れた様な顔をするサソリの視線の先には、規則正しい寝息を立てながら眠るデイダラの姿。はっきり言って可愛らしいその寝姿を崩すのは勿体ない気がする、という気持ちを振り払うかの様に首を横に振り、サソリは顔に意地の悪い笑みを浮かべて右手の指をデイダラに向けた。
指の先から青白く光る糸が二本現れる。言わずと知れた、チャクラ糸である。それは音もたてずにデイダラの力無く垂れた両肩にへばり付き、きっちりと繋がった。もうサソリが何をしたいのかは、わかるだろう。

―この後五秒後、デイダラの身に予想通りの事が起こった。





因みにその五秒の間は、デイダラの寝姿をもう少し見ていたかったというサソリの本心の現れである…はずだ。


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リクエストありがとうございます。
なんとなく蠍泥は書き慣れてないので
いろいろと変ではありますが
読んで頂ければ幸いです\(^o^)/



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