2011.0408.
(1111hit文、社員角都×社長飛段)



「角都さん、社長が呼んでるそうですが」

鮫顔の同僚にそう言われ「はぁ?」と間の抜けた声を出してしまった。くそ、俺らしくもない。…せっかく順調に仕事が捗っていたのにその邪魔をするとはあの社長は一体なにを考えているんだなぜ真面目に働いている俺がこんな目に合わなくてはならないんだ、ていうかなんであんな馬鹿が社長になれたの?なんであんなやつが人の上に立ってるの?ああもう考え出したらキリがない。そんな俺を見た鮫野郎が、ふふと微笑しながら「ずいぶんお気に入りにされてしまったようで」と宣いやがったので俺は持てる限りの力で思いっきりやつの足を踏んでやった。するとやつは「ぎゃっ」と情けない悲鳴をあげてあまりの痛みにしゃがみ込みうち震えた。そんな鮫野郎をよそに俺は重々しい足取りで社長室へ向かう。「や、八つ当たりだ…」と非難の声をあげる鮫野郎が視界にうつったが、それは見なかった事にしよう。今度お詫びに缶コーヒーでも買ってやれば許してくれるだろうしな。



鮫顔を犠牲にしたおかげで幾分か気持ちが晴れたものの、馬鹿社長への怒りはいまだ薄まる兆しが見えない。何度かすれちがった同僚や他の社員達も俺の顔色を見てあからさまに避けていく。そんなに恐ろしい顔をしているか俺は。ふいに腕時計を見れば…ああなんて事だ昼休みに食い込んでしまうじゃないか。ていうか昼休みっていう単語が頭に浮かんだ瞬間に腹がへってきたんだけどなにこの呪い。さいあく。
なんて考えながら歩いていたらいつのまにか社長室の前。ちくしょう職務乱用!!俺は苛立ちをそのままノックにこめた。もうドアが「コンコン」じゃなくて「ガインガイン」ていってるぞ。もうこれはノックじゃなくてパンチだな。それよりなんだ?返事がないぞ?こんなに大きな音たててドア叩いてるのに返事がないって事はあれか。馬鹿社長は昼寝中か?つまり帰っていいのか?いいんだな?角都さん帰っちゃいますよ社長、ではさよな…


「どーぞ」

いつも通りのだるそうな声。ああやっぱりいたんだななんて落胆しながら俺は力無くドアノブに手をかけてドアを開け、さっと閉めたた。それを見計らったかのようにヤツは「かーくずーっ!!」なんて先程の声からは想像のできないような生き生きとした大声で叫びながらジャンプかーらーのー抱き着きっを食らわせて来たのだった。そして衝撃でよろめいた俺はガツンと頭をドアにぶつけたわけだ。ああ俺って可哀相。


「角都ゥー、会いたかったー」
「俺は会いたくなかった」
「またまたァ、そんな事言って実は満更でもないんだろォー?」
「この顔を見てよくそんな事が言えるな社長…」

「すげーシワ!!」とけらけら笑う社長。なんなのこいつなにがそんなに楽しいの?だが…ああ俺はなにがしたいんだ、こいつのこんな生意気面を見ただけでこう…なんというか…満たされる?みたいな感覚?に陥る俺はいったいなんなんだ。
ばふっと正面から抱き着かれドアに体がくっつく。もう少し歩けばソファーがあるのにこいつは本当に堪え性がないな。


「角都くーん、二人っきりの時は社長って呼ぶなって言ったでしょー」
「そうでしたか?」

こんな小さな事にもいじけるこいつが面白くて、俺はわざと敬語を使う。二人きりになった時の『社長の三人称』と『敬語』はこいつの一番嫌うものだという事を俺は知っている。案の定、顔をあげた社長は頬をぷうっと膨らませて俺をジロリと睨んだ。


「てめー…しらばっくれんなコラ!」
「ハァ、煩いぞ社長」
「だから社長じゃなーい!!飛段!!俺、ひ・だ・ん!!」
「飛段」
「そーそ…てうわっ」

いい加減固い背もたれに嫌気がさしたので、俺は社長を抱えてソファーに向かった。おろせおろせとぴーぴー騒ぐ『飛段』は無視し、わざと乱暴にソファーの上に放る。
まるで玩具のような扱いに飛段は「なにすんだコラー!!」と喚いた。それを一瞥しながらソファーの前に立った状態で飛段を見下ろす。


「飛段、なんの為に俺を呼んだんだ?」
「だから角都に会いたくなったワケェー」
「帰る」
「ちょちょちょちょいまち!!なんでそうなんだ?!」
「いちいちくだらない理由で部下を動かすな。大体俺は仕事を遮られ貴重な昼休みまでこうして棒に振ろうとしているんだ!!」
「あー角都、腹へってっからイライラしてんだろ!!」
「そうは言ってないだろうがいや確かにそうなんだけどもさ。というか分かってるんなら引き止めるな!!」
「ああああ待ってぇ!!…コラ角都!!しゃちょー命令だぞ!!止まれ止まらんか!!」

社長命令。
それは卑怯だな飛段。ていうか部下一人を部屋に引き止めるだけのために発動する社長命令ってどうなんだ。しかし逆らうわけにもいかないのでドアに向けていた足を渋々止めて飛段に向き直る。


「そんなに腹へってんならよぉ…」

おそらく苦虫を噛みつぶしたような顔をしているのであろう俺を見た飛段はごそごそとスーツのポケットをあさり、なにやら小さな袋を取り出して「やるー」と放った。なんだと思って確認すると、飴。しかも一粒。この飴一粒で空腹を凌げというのかこいつは。ぶっちゃけなんの足しにもならないと思うのだがどうか。


「それ食いながら俺の話でも聞いてくれよォ」
「俺はガキじゃないんだぞ…!?」
「って文句言いながらちゃっかり食ってんじゃんかー」

食ったっていいだろうが別に。俺は空腹なんだから!!というかなんでその高そうなスーツのポケットから飴が出てくるんだ。口が寂しいのがそんなに嫌なのかお前は。それとも策略か?俺が空腹なのを見越して飴を…、つまり俺を餌付けするつもりか貴様。
と思ってもにっこり微笑むこいつの顔を見るとついつい口ごもってしまうのは俺の困った質である。認めたくはないがおそらくこの後俺はちゃっかりこいつの話に付き合う事になるだろう。断れないのは実はこいつが好きでもっと一緒にいたいとかそういう訳ではない、たんに仕事に戻るのがめんどくさくなっただけだ。絶対にそうだ。

じゃなかったらこんな会社辞めてやる!!


だが実行には移せないのも俺の困った質。
お前のせいだ飛段。どこまで部下を困らせればいいんだ、なぁ、社長?


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社長×社員難しいぃ/(^o^)\
いろいろと中途半端ァァ!!
でも萌ェェ!!←
ひじき様ー、こんなんでよければ
お持ち帰りくださいませぇー!!


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