部活帰りの公園。いつも通りの時間。何気ない一時。肩に感じる謙也さんの重み。そっと覗いた寝顔が普段見上げている顔に比べて少しばかり幼いものだから、中三なんてまだまだ子供やなと妙に落ち着いた中で感じた。だったら中二の俺はもっと子供。身長も低いし、ドSとか毒舌とか言われているわりにはこの人に支えられていると感じることも多々ある。見た目でも精神面でもやっぱり俺は年下。

「せめて身長あったらな…」

だからと言って、二人が子供だということは変わらない。親の金で学校へ行って部活をして、休みの日には友達と遊んで家に帰れば温かいご飯が待っている。12歳から15歳までの少年少女達誰しもが経験するなんともない普通の中学生生活。そんなありふれた日常の中で俺がどれだけこの人との身長差を気にしたって、どれだけこの人に劣等感を感じたって、端から見ればだだの義務教育中の子供の色恋沙汰でしかない。ありふれた日常にあるのは、ありふれた出来事。自称世界一幸せな男の恋愛はこんなにも簡単にまとめられてしまう。それに気付けば、髪を明るい色に脱色するのも沢山のピアスの穴を開けるのも、その枠から脱したいが故の行為に思えて仕方ないんだ。抱き合ってキスをしてセックスに励んだところで、一丁前に大人の真似をする糞ガキの存在なんて点にも満たない。その点の集まった中で呟かれた愛の言葉を誰が拾ってくれる。誰が耳を傾ける。俺と彼が感じている至上の幸せは、隣を擦れ違ったカップルも感じているのかもしれない。広い広いこの世界で巡り会えた奇跡があっても、それが特別なものとは限らないのだ。その事実にどれだけの人間が堪えているの。どうして俺は、気付いてしまったの。

20110804
多発する奇跡。